安倍元首相銃撃、公選法違反適用も視野…「民主主義の根幹揺るがす」重い刑科す事例も
2022/09/08 10:11
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220908-OYT1T50145/

 安倍晋三・元首相が参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した事件は、8日で発生から2か月になる。奈良県警は、山上徹也容疑者(41)(殺人容疑で送検)が鑑定留置中で取り調べができない中、裏付け捜査などを進めている。殺人容疑のほか、選挙の自由を妨害したとする公職選挙法違反や、殺傷能力のある銃を密造したとする武器等製造法違反などでの刑事責任追及も視野に入れるが、詰めるべき課題は多い。

 山上容疑者は7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、自民党候補の応援演説中だった安倍氏を銃撃した。事件当日はこの候補者を始め、全国で街頭演説を取りやめる動きが広がった。ある捜査幹部は「選挙の妨害行為であることは明らかだ」と述べ、公選法違反にあたると指摘する。

 過去の選挙中の殺人事件で、選挙妨害を重視して、他の事件より重い刑が科されたケースもある。

 2007年に、4選を目指した長崎市の現職市長が選挙中に射殺された事件では、殺人罪のほか公選法違反にも問われた暴力団幹部の男に対し、08年の1審・長崎地裁が「民主主義の根幹を揺るがす犯行だ」として、死者が1人ながら求刑通り死刑を言い渡した。

 09年の2審・福岡高裁判決は極刑を回避したが、「選挙妨害の中で最悪のもの」と指弾して無期懲役とし、12年に最高裁で高裁判決が確定した。

 重視されるのは、選挙の自由を妨害する意図があったかどうかだ。

 山上容疑者はこれまでの取り調べで、母親(69)が入信した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を恨んでおり、同連合とつながりがあると思った安倍氏を狙った、と供述している。

 園田寿・甲南大名誉教授(刑法)は「選挙中に安倍氏を銃撃することで、選挙にどんな影響が出るとわかっていたか。取り調べなどで、その認識をどれほど明らかにできるかが焦点だ」と指摘する。

(略)