【フランクフルト=林英樹】ウクライナ政府は20日、全国で電力使用を制限した。ロシア軍による攻撃で発電所に被害が出ており、エネルギー当局幹部は米CNNに「国内インフラと発電能力の約40%が深刻な損害を受けている」と述べた。

ウクライナの国営電力会社ウクルエネルゴが20日午前7時から午後11時まで電力供給を制限すると決めた。首都キーウ(キエフ)など主要都市で地下鉄やバスも減便する。地域によっては計画停電の可能性もある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は19日夜のビデオ演説で「新たに3カ所の電力設備が破壊された」と述べた。「ミサイルとドローン(無人機)を100%撃墜できるまでテロ行為はエネルギー施設に向けられるだろう」との見方を示した。

8日に起きたウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋の爆発以降、ロシア軍は報復としてウクライナ全土のインフラを集中攻撃している。ゼレンスキー氏はロシアが使用したドローン計233機を撃墜したと明らかにしたが、1000以上の町や村で停電が発生している。

フォンデアライエン欧州委員長は19日、インフラを標的にしたロシアの攻撃について「市民が水や電気、暖房を使えないようにすることを明らかな目的としており、純然たるテロ行為だ」と指摘。ドイツのショルツ首相も20日、「ロシアのプーチン大統領はエネルギーと飢餓を武器として利用している」と非難した。

日本経済新聞 2022年10月20日 19:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR204Y90Q2A021C2000000/