仙台高検検事長の公用車が山形県酒田市内で物損事故を起こしたにもかかわらず、警察に通報していなかったことが20日、河北新報社の取材で分かった。公用車は辻裕教検事長の出張で使われていた。現場は道交法で警察への報告が必要な場所で、報告義務違反(当て逃げ)に当たる公算が大きい。

バンパー付近破損
 複数の検察庁関係者によると、事故があったのは6月30日。辻検事長が管内視察のため山形地検酒田支部(酒田市)を訪れた際、職員が運転していた専用の「検事長車」が支部建物のスロープに衝突した。建物に目立った損傷は見当たらなかったが、車は後部バンパー付近が破損した。

 事故が起きた時に辻検事長は車に乗っていなかったとみられ、視察後、同じ車に乗って仙台に戻ったという。公用車は仙台高検が入る仙台法務総合庁舎(仙台市青葉区)の車庫に1カ月近く保管され、7月28日に修理に出された。

 道交法は交通事故があった場合、けが人の有無や物損の程度などを警察に報告することを規定。一般道だけでなく、不特定多数が利用する公共施設や商業施設の駐車場も報告対象になっている。警察への報告を怠れば当て逃げに該当する。

庁内で疑問の声
 山形県警に開示請求した文書によると、酒田市内でこの日、物損事故として処理した4件に支部の事案は含まれていなかった。

 物損事故として報告していないことには検察庁内でも疑問の声が上がっている。ある関係者は「軽微な交通取り締まりを受けて不満を抱えている市民は多い。検事長は事故を知っていたはずで、不申告は高い順法精神が求められる組織の行為としてふさわしくない」と語る。

 仙台高検の山崎耕史次席検事は取材に「検事長車が物損事故を起こした記憶はあるが、警察への申告を含め、その後の処理は正確に覚えていない」と話した。

 辻検事長は「次席が調べて回答する」と話した。

河北新報 2022年10月21日 6:00
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