山口健太ITジャーナリスト

10/24(月) 17:42

マイナンバーカードと保険証の一体化を巡り、さまざまな議論が起きていますが、その中には「マイナンバーを使う」との誤解が見受けられます。このような誤解が生まれる背景として、マイナンバーカードの設計にも問題があると筆者は考えています。




マイナ保険証は「マイナンバーを使っていない」

マイナ保険証についてSNSやメディアの反応を見ていると、そもそも「マイナンバー」と「マイナンバーカード」の区別がついていない人がいるように見受けられます。
まず確認しておきたい点として、マイナ保険証では日本国内の全住民に振られている12桁のマイナンバー(個人番号)は使っていません。
これはデジタル庁などが配布しているリーフレットなどでも説明されています。
病院などの窓口ではカードを手渡すのではなく、読み取り機能を備えた端末にカードをかざして使います。物理的にカードの裏面を見られることはなく、システム上も医療機関のスタッフなどが患者のマイナンバーを知ることはできない仕組みです(顔認証に対応していない端末の場合はカードの表面を見せる必要があります)。

マイナ保険証が登場した背景として、2023年4月から病院などに「オンライン資格確認」の導入が原則義務化されます。現在の健康保険証も使えますが、医療機関のスタッフは保険証に書かれている記号や番号を手入力することになります。
そこでマイナンバーカードがあれば、ICチップ内の電子証明書と、「顔認証」または「4桁のパスワード」を用いて本人確認をした上で、オンラインの資格情報にアクセスできるというわけです。
(追記:顔認証や職員による顔の目視確認だけで利用できる点は、通常の利用者証明用電子証明書の使い方と異なります。これは緊急時や、パスワードを忘れた高齢者などを想定していると考えられます)

もし、あらゆる情報のオンライン化に反対するといった立場であれば批判するのも分かりますが、そうでないのであれば、マイナ保険証自体は現在の保険証を安全かつ便利にするものと理解してよいでしょう。
セキュリティ面では、さすがに保険証を偽造する人はいないと思いたいところですが、うっかり有効期限を過ぎた保険証を使ってしまうとか、他人の保険証を不正に利用するといった行為はオンライン資格確認により防ぐことができます。
ただ、マイナンバーカードの普及率は50%を超えたばかりであることから、現在の保険証を2024年秋に廃止するという目標はチャレンジングといえます。このタイミングで期限を切ってしまったことで、無用な混乱を呼び起こした感は否めません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yamaguchikenta/20221024-00320853