【ニューヨーク=山内菜穂子】8日投開票の米中間選挙にあわせ、中西部ミシガン州など5州で人工妊娠中絶の州規定に関する住民投票が実施された。米メディアは保守色が強い南部ケンタッキー州では中絶の権利を否定する州憲法改正案が否決されたと報じた。ミシガン州など3州では中絶の権利を州憲法で保護すべきだとの民意が示された。

州議会で共和党が多数派を握るケンタッキー州では、「中絶の権利は保障されていない」と州憲法に明記する改正案の是非が問われた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、9日時点(開票率91%)で反対が52.4%と、反対票が賛成票を上回った。

連邦最高裁判所は6月、中絶の権利を認めた1973年の判決を覆し、各州に判断を委ねた。ケンタッキー州はその直後、中絶を禁止する州法を施行していた。AP通信は今回の結果を受けて、州の裁判所が中絶の権利を認める判断を下す可能性があると指摘した。

8月には「保守州」の中西部カンザス州の住民投票で中絶の権利が維持された。共和党が中絶の権利への制限を強める一方で、同党が地盤とする州で相次ぎ反対の民意が示された形となる。

西部モンタナ州では8日、中絶を試みて生まれた子などにも医療を義務づける法案について問う投票があった。開票率82%の時点で反対票が52.4%にのぼった。同州も保守色が強い傾向がある。

このほか、ミシガン州や西部カリフォルニア州、北東部バーモント州でもそれぞれ中絶の権利を州憲法で保護すべきかを問う投票が実施され、賛成票が反対票を上回った。カリフォルニア州とバーモント州はリベラル色が強い。中間選挙で民主党と共和党が激しく争ったミシガン州の結果に注目が集まっていた。

米NBCによる中間選挙の出口調査によると、連邦最高裁の中絶に関する6月の判断について61%が「不満や怒り」を感じたと答えた。投票先を決める際の最も重要な課題については27%が中絶をあげた。インフレ(31%)に次いで多く、犯罪(11%)や銃政策(11%)、移民問題(10%)を上回った。

日本経済新聞 2022年11月10日 4:31
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09EBR0Z01C22A1000000/