塚田賢慎
2022年11月09日 10時17分

成人動画業界で異色を放つ存在の「マジックミラー号」。ソフト・オン・デマンド(SOD)が1996年に作ったスタジオ車両だ。そんなマジックミラー号の文字商標が突如として出願されているとして、SNS上で話題になっている。

実はすでに、SODは別の3区分で約20年前に登録済みだ。SODの狙いはどこにあるのか。

●昨年は25周年を祝った

「AV史上最大の発明品」とSODが誇る「マジックミラー号」の文字が商標出願されているとして、10月にツイッター上で話題になった。


たしかに、商標の検索サイト「J-platpat」で調べると、10月17日付で39類(車両による輸送,自動車の貸与など)区分の出願が確認できる(商標出願2022-118686)。

ただ、SODはすでに「マジックミラー号」を別の3つの区分(09類、12類、41類)で2003年に出願し、翌年登録されている(商標登録第4746722号)。

別区分での出願の背景にあるのではないかとネット上で指摘されているのが、似た名前の「マジックミラーカー」の存在だ。

「マジックミラー号をパロディ化した軽トラックカスタムカー(マジックミラーカー)のレンタルサービス」(「MMカー」の公式サイトから)として、すでに事業をおこなっており、MMカー側は今年5月、「マジックミラーカー」を39類で商標出願している。

この動きを受けて、SODが自社のマジックミラー号を守るため、同じ区分で改めて出願したのではないかと考えられているわけだ。

弁護士ドットコムニュースは、商標出願の理由や狙いについて取材を申し込んだが、ソフト・オン・デマンドグループは11月3日、回答差し控えとした。

知的財産権にくわしい岩永利彦弁護士にSODの狙いはどのように考えられるのか聞いた。


●マジックミラーカーを見た人が「SOD」のものだと勘違いしてしまう可能性も

——「マジックミラーカー」の商標が39類で出願され、登録が認められた場合、SOD側にはどのような影響が生じるでしょうか。

まず、9類は一般的な機械器具(商品)のカテゴリーで、コンピューター用のソフトウェアもここに入ります。12類は乗り物(商品)で、陸海空すべてを含みます。41類は教育訓練関連(サービス)で、放送番組の制作なども含まれます。

今回の39類は輸送関連(サービス)のもので、12類と混同しそうになります。

しかし、12類は乗り物そのもの、つまりは、トヨタ自動車や今治造船などのメーカーが必要とするカテゴリーであるのに対し、39類は乗り物を用いたサービス、つまりヤマト運輸や商船三井などのサービス提供者が必要とするカテゴリーだという違いがあります。

SOD側にとって、39類のサービス、つまり輸送関連のサービスは重要なものではないとは思います。実際に事業として、おこなっているかどうかも怪しいと思います。

しかし、だからと言って、「マジックミラー号」と類似と言ってよい「マジックミラーカー」が登録されてしまうと、本家の「マジックミラー号」で類似のサービスをSOD側がやろうと思ってもやれなくなってしまう可能性が出てきます。

影響はそれだけではなく、一般の消費者は、「マジックミラーカー」の標章等を見て、「あ、あのSODがついにそういう商売も始めたか」と勘違いすると思います。いわゆる「出所の混同」の問題となります。

そのような問題を防ぐため、SOD側はあまり使用していないと思われる39類での出願を余儀なくされたのではないでしょうか。

●マジックミラーカーは拒絶通知をうけていた。その理由は3つ

https://www.bengo4.com/c_18/n_15224/