11/16(水) 9:02配信
Web東奥

 リンゴの生産量日本一の青森県で収穫が最盛期を迎える中、産地では人手不足が深刻化している。県内最多の生産量を誇る弘前市では、生産者から「手が回らない」「後継者がいない」などと悲痛の声が上がっている。

 津軽一円で県産リンゴの主力・ふじが収穫シーズンを迎えた11月初旬。岩木山を望む弘前市船沢地区で、農家の女性(78)がサンふじ(無袋ふじ)の玉回しと葉摘みに精を出していた。実に影をつくる葉を取り除き、色がついていない部分を日なたに向ける、価格を左右する重要な作業だ。

 「今年は日焼けも多くてだいぶ間引いたけど、よく育ってくれた」。女性はたわわに実ったリンゴにそっと触れ、笑みを浮かべた。

 周囲は続々とふじの収穫作業に入っているが、この畑ではまだ行われていない。リンゴに下から光を当てる反射シートや枝を支える支柱を先に片付けなければ、作業が効率的に進まないという。「雪が降る前にやらないといけないのだけど、手が回らなくて」。10アールの畑で作業しているのは女性一人だった。

 農家に嫁ぎ50年余り。85歳の夫は3年前に体を壊して畑に出られなくなった。人を雇ったこともあったが、給料のほかにガソリン代も求められ「一人でやれるうちは一人でやろう」と考えるようになった。休日は会社勤めの息子が手伝いに来るが、天候が悪ければ作業はなかなかはかどらない。「腰も足も痛いけど、あと少しと思えば頑張れる。人が足りているところなんてないでしょう?」

 弘前市折笠の花田勝さん(63)の園地では小雨の中、家族、親戚ら6人が収穫に取り組んでいた。花田さんは「息子が後を継いでくれてかなり助かっている。ただ、周りには後継ぎがなくやめていく農家も多い」と話す。

 同市悪戸の農家小田桐重章さん(65)は「後継者がいるところは機械も新しくして作業効率も良さそう。うちのような後継者がいないところは踏ん張るしかない」と苦笑いを浮かべた。

 就農15年目の三上智恵子さん(49)は同市下湯口の父の畑を引き継いだが、働き手は両親を含め3人だけ。「この先、父が動けなくなったら男手もいなくなるし、今のままで続けられないかも」。将来的に畑はどうするか、答えはまだ出ていない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dc8f43f86fd266ca6122c6adc8b1ec7d41fa143b