2007年に新潟市水道局の男性職員(当時38歳)が自殺したのは職場で精神的に追い詰められたのが原因だったなどとして遺族が市に損害賠償を求めた訴訟で、市は28日、市の過失を認めて約3500万円の支払いを命じた新潟地裁判決について、控訴しないことを明らかにした。

 24日の地裁判決は、遺族が主張した男性に対する上司のパワハラ行為を認定しなかったが、職場の環境構築を怠った安全配慮義務違反があったなどとして市の過失を認めた。


 市はこの日、市議会環境建設常任委員協議会で地裁判決について報告。市水道局の佐藤隆司局長が「司法判断を真摯(しんし)に受け入れ、控訴せず判決金額の支払い手続きを進める」などと述べ、遺族に謝罪する意向を示した。

 佐藤局長は報道陣の取材に「提訴から7年が経過し、遺族の心情を考慮すると、これ以上争いを続けるのはお互いによろしくない。判決を覆すだけの材料も持っていない」と説明。中原八一市長は同日、「亡くなられた職員に心より哀悼の意を表します。市の過失を重く真摯に受け止めており、ご遺族に深くお詫び申し上げます。市役所を挙げて良好な職場づくりに取り組んでまいります」と文書でコメントした。

 一方、自殺した男性の妻(53)はこの日の市議会を傍聴。報道陣の取材に「水道局の説明は中身がなく、反省していないようにしか感じられず残念でならない。夫の命を奪ったこと、遺族を苦しめ続けた15年間を自覚して反省してほしい」と訴え、謝罪については「今の状態では受け入れられない」と話した。妻は市が判決を受け入れる場合には控訴しない考えを明らかにしており、25日には控訴しないよう求める中原市長ら宛ての要請書を市に提出していた。【内田帆ノ佳】

毎日新聞 2022/11/29 10:42(最終更新 11/29 10:55) 719文字
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