ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が、キリスト教徒が多いロシア民族ではない少数民族が残忍な行為をしていると発言し、ロシアで波紋を広げている。

 問題の発言は、11月下旬の英語のカトリック系雑誌「アメリカ」のインタビュー記事の中でフランシスコ教皇が述べた。

 ウクライナでのロシア軍の残忍さについて多くの情報があるとして、「一般的に最も残忍なのは、恐らくロシアの伝統に属さないロシア人、例えばチェチェン民族やブリヤート民族などだろう」との見方を示した。

 ロシアで主流の宗教はキリスト教のロシア正教会で、チェチェン民族は主にイスラム教を信仰し、ブリヤート民族は仏教徒が多い。

 ウクライナ侵攻では、欧米を中心にロシア軍による市民の殺害や拷問といった「戦争犯罪」への批判が高まっている。ただ、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の傭兵(ようへい)やロシア人兵士が残虐行為をしているとの情報もあり、民族だけで判断できないのは明らかだ。

 一方で、フランシス教皇は「確かに、侵略しているのはロシア国家。それは明確だ」とも話した。

 教皇の発言に対し、ロシア極東ブリヤート州の知事は「カトリック教会のトップがチェチェンやブリヤートという特定の民族の残忍さを評価するのは奇妙だ」とSNSの投稿で反発。ロシア上院のコサチョフ副議長は「異なる民族、異なる宗教の間に線を引いている。教皇は大きな間違いを犯している」と批判した。

 ロシア外務省のザハロワ報道官は「これはもはやロシア嫌いでなく歪曲(わいきょく)だ」とSNSに投稿した。

 一方、ロシア国営タス通信によると、ローマ教皇庁(バチカン)の関係者は「ロシア国民を侮辱する意図はまったくなかった。発言の翻訳を点検する」と釈明したという。

朝日新聞 2022年11月30日 7時00分
https://www.asahi.com/articles/ASQCZ1C96QCYUHBI04B.html?iref=comtop_7_04