「日本基準では優秀な人材は誰も来ない」


大幅な賃金引き上げを決断した経営者のことばです。長年続く賃金の伸び悩みに加えて、記録的な物価の上昇にも直面する日本。
賃上げの実現が課題となる中、徹底した生産現場の改革で“稼ぐ力”を高め、社員の平均年収を20%余り引き上げた企業があります。
その取り組みを追いました。

自動車やロボット向けなどに工作機械を手がける大手メーカーの「DMG森精機」は去年の夏、
新入社員の初任給の大幅な引き上げと、すでに働いている社員の大胆な待遇改善に踏み切りました。

国内で働く社員の年収を平均で20%余り引き上げる給与改定を決めたのです。社員の平均年収は2021年の時点で723万円でしたが、
この引き上げによって、2023年には886万円になる見込みです。

工作機械の分野でも自動化やデジタル化が進む中で、顧客ニーズの変化に対応できる優秀な人材の確保が急務となっていることが決断を後押ししましたが、
その賃上げを実現できた大きなきっかけがある“気づき”でした。


円安の影響もあり、日本の賃金体系では、特に海外の優秀な人材は集まらないという強い危機感がありました。

森社長
「今の為替でいくとあまりにも日本の賃金が安すぎる。日本基準では優秀な人材は誰も来ない。
円安で苦しまれている業種もあるので偉そうなことは言えないが、うちは8割9割が輸出なので、円安の恩恵があるときに賃上げに踏み切った。

こんなことやってたらダメだよ、つぶれるよと言われるかもしれないが、うちのようにオーナーシップが多少強い会社が率先垂範して賃金を上げて、
実証的に見せて変わっていくしかない」

森社長は、今回の賃金水準をまずは3年間は続け、さらに自社の製品の高度化が進み、
ヒットすればさらに賃金として社員に還元していきたいと意気込んでいました。

会社が、今回の賃上げにかけたコストは100億円にのぼりましたが、成長には欠かせない投資だといいます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230127/k10013960611000.html

DMG森精機 森雅彦社長
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230127/K10013960611_2301261300_0127113547_01_13.jpg