【ワシントン=赤木俊介】米労働省が9日発表した失業保険統計(季節調整済み)によると、2月26日?3月4日の週間の新規失業保険申請件数は前週から2万1000件増え、21万1000件となった。22年12月以来の水準となるが、歴史的に見ればなお低位で推移している。企業による人員削減が増えるなか、労働市場の需給がどこまで和らぐかが焦点になっている。

新規申請件数はダウ・ジョーンズ集計の市場予測(19万5000件)を上回った。4週間移動平均は前週から4000件増え、19万7000件となった。

2月19?25日の週間の総受給者数は171万8000人と、前週の改定値から6万9000人増えた。170万人台に乗せたのは22年12月以来だ。

一方、米チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが9日発表した調査によると、米企業や政府機関による1月?2月の人員削減は計18万713人と2009年の同期間(42万8099人)に次ぐ高水準となった。2月の人員削減計画は7万7770人と前月から24%減ったが、前年同月比では5倍強に増えた。昨年後半から人員削減に乗り出す企業が相次いでおり、2月時点で発表された人員削減計画の35%はIT(情報技術)企業によるものだった。

2月の採用計画は2万8830人と、前月から12%減った。前年同月比では87%の大幅減となった。同社のアンドリュー・チャレンジャー氏は「企業は米連邦準備理事会(FRB)による利上げを注視している」と指摘。「多くの企業は今後数カ月で景気が悪化するとみており、人件費以外のコストも削減してきた」と分析した。

2月発表の1月の米雇用統計では雇用者数が大幅に増加し、労働市場の堅調ぶりが鮮明になった。FRBのパウエル議長は7?8日の議会証言で、利上げペースを加速するかどうかの判断について「今後公表される指標を含めてデータの全体像をみる」と強調した。このため、10日発表の2月の雇用統計に市場の関心が集まっている。

日本経済新聞 2023年3月10日 1:31 (2023年3月10日 5:35更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09DRO0Z00C23A3000000/