米軍は14日、黒海上空でロシア軍機2機が米国の無人機の飛行を妨害し、うち1機が無人機のプロペラにぶつかったと発表した。無人機は飛行や制御ができなくなり、米軍自ら公海上で墜落させざるをえなくなったという。米軍は「無謀な行為」だとロシア側を非難している。

 ロシア側は接触を否定している。

 米欧州軍によると、中央ヨーロッパ時間の14日午前7時過ぎ、米軍の無人偵察機MQ9が黒海上空の国際空域で通常任務をしていたところ、ロシア軍「スホイ27」2機の妨害に遭ったという。衝突前にもロシア機は無人機の前を飛行したり、無人機に向けて燃料放出をしたりしていたという。こうした危険な行為は、誤算や意図しない深刻な事態を招きかねないと、米欧州軍は指摘している。

 米国の欧州・アフリカ空軍のヘッカー司令官は「危険かつプロフェッショナルではない行為により、あやうく両機とも墜落するところだった。米国と同盟国の航空機は国際空域での飛行を続ける。ロシアに対し、専門的かつ安全に行動することを求める」と非難した。

 その後、国防総省で記者会見したライダー報道官によると、MQ9は情報収集や警戒監視、偵察の任務にあたっており、こうした活動はロシアのウクライナ侵攻以前から同地域で続けていた。

 ライダー氏はロシア機が「無人機の前で燃料を放射してから過度に接近し、実際にプロペラを損傷させた」と語った。ロシア機の近接した飛行は30~40分ほど続いたという。接触によってロシア機も損傷し、その後着陸したとみられるというが、着陸した場所は空かさなかった。

 撃墜した無人機を回収するかどうかも回答しなかった。ただ、ロシア側が回収したことは確認されていないという。MQ9には武器を搭載することもできるが、当時の状況も明かさなかった。

 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官はこの日の電話会見で、黒海上空でのロシア軍機による「妨害行為は珍しいことではなく、ここ数週間でも複数の妨害行為があった」と語った。その上で、「今回の事件は明らかに安全でなく、プロフェッショナルでなく、我々の航空機の撃墜を招いたという点で注目すべきものだ」と述べた。

 米国務省のプライス報道官も14日の会見で、この日午後にロシアの駐米大使を同省に呼び出す予定で「強く抗議する」と話した。米国の駐ロシア大使はすでにロシア外務省に「強いメッセージ」を送ったという。ロシア側の動機を問われるとプライス氏は「動機よりも実際に起きたことの方がはるかに重要だ」と述べた。

 一方、ロシア国防省は14日、ウクライナ南部クリミア半島付近の黒海上空で、ロシア国境に向かって飛行していた米国の無人機MQ9が、急激な針路変更によって制御不能となり、水面に墜落したと発表した。ロシアの戦闘機は武器を使用せず、無人機と接触もせずに帰還したという。ロシアは2014年、クリミアを一方的に併合している。(ワシントン=下司佳代子)

朝日新聞 2023年3月15日 3時38分
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