東京・多摩地域で水道水に利用していた井戸水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFASピーファス)が検出された問題で、住民の血液検査を実施している市民団体が7日、273人分の分析結果を発表した。居住地域別にみると、国分寺・立川両市の住民の血中のPFAS濃度が高く、全体でも6割以上が米国で健康被害の恐れがあると定める指標を超えていた。(松島京太、写真も)

 この問題を巡り、都水道局が2019年以降、水道水に利用している水源の井戸34カ所でPFAS濃度が高いため取水を停止。全国的には、工場や米軍施設の周辺で汚染が問題化している。多摩地域では、18年に米軍横田基地(福生市など)でPFASを含む泡消火剤3000リットル以上が土壌に漏れたと英国人ジャーナリストが報道し、基地との関連が浮上している。
 19市町村に居住する21?91歳の男女273人分の血液を分析した結果、基地東側の自治体に住む人の血中PFAS濃度が特に高い傾向が鮮明となった。米国の指標を超えていたのは、検査を受けた国分寺市の住民の94.9%で、立川市が78%と続く。全体では61.1%だった。

 都内の地下水は基本的に西から東の方向に流れている。分析を担当する京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「地下水の上流に位置している横田基地が影響しているのでは」と、汚染源の可能性が高まったという認識を示した。
 多摩地域では水道水に井戸水を使用しており、浄水器を使っていた場合には、血中濃度が平均で2割程度低いことも分かった。
 血液検査は、市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」と原田准教授が昨年11月に始めた。今回、4種類のPFAS(PFOSピーフォス・PFOAピーフォア・PFHxSピーエフヘクスエス・PFNA)の濃度を発表。日本ではPFAS血中濃度の指標がなく、海外の指標を使って健康被害の恐れがある検査参加者の割合を示した。
 今年1月には中間まとめとして、今回の結果にも含まれている国分寺市を中心とした87人のうち85%が米国の指標値を超えていたことを発表。今回は2回目の中間まとめで、5月下旬をめどに約650人分の結果を最終報告する。

 有機フッ素化合物(PFAS) 泡消火剤や塗料などに使われてきた化合物の総称。約4700種類あるとされる。人体や環境への残留性が高く、腎臓がんの発症やコレステロール値の上昇など健康に影響が出る恐れがあるため、代表的物質のPFOSやPFOAなどは国際的に規制が進む。血中濃度の指標は米国の学術機関とドイツの政府諮問機関が設定している。米国の指標では7種類のPFASの合計値が血液1ミリリットル当たり20ナノグラムを超えると、ドイツの指標ではPFOSが同20ナノグラム、PFOAが同10ナノグラム以上で、健康被害の恐れがあるとされる。

東京新聞 2023年4月7日 00時00分
https://mainichi.jp/articles/20230407/ddm/002/070/049000c