自民、公明両党はLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を18日にも提出する方針だ。ただ、法案は差別をかえって助長したり、訴訟の乱発を招きかねないなど懸念要素が少なくない。自民内にはなお異論が残っており、円滑な成立は見通せない状況だ。

2年休眠の議連案を修正
法案は、今回の提出までに複雑な変遷をたどった。令和3年4月に自民の特命委員会が法案の「要綱」をまとめ、これを超党派の議員連盟が中心となって修正を加えた「議連案」を策定。この内容に反発した安倍晋三元首相(自民元総裁)が立法作業の中断を求めた。今年5月に入って自民が再修正を加え、公明党との合意に至った。

法案の基本理念には「性的指向及び性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と明記された。議連が要綱に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」と書き加えていたが、法案の趣旨が理解増進から差別禁止に変わったとして反対論が渦巻いた。申告で性別を決める「性自認」の表現も危険視され、法案では「性同一性」と変わった。

衆院法制局は自民内の議論で、先進7カ国(G7)のすべての国で「性的指向・性自認に特化して差別禁止を定める法律はない」と説明しており、法整備は不要だとの考えも根強い。

さらに問題点として指摘が多いのは、学校や事業者に対し、教育や啓発に努めるよう明記したことだ。

議連案では、7条に「学校の設置者の努力」として独立した条文を設けていた。自民内では「性教育すら十分にできていない」などとして削除を求める意見が噴出。法案ではこの文言を7条から削除し、事業主などの努力を求める6条の中に位置づけを変えたが「内容が変わっていない。小手先の修正だ」として反発も根強い。(以下有料版で)

産経新聞 2023/5/17 19:34
https://www.sankei.com/article/20230517-IXM2ZKWISNOJNKXJ7S43QJ3VZA/