5月30日に「らくらくホン」などのスマートフォン端末の製造を手がけるFCNT(神奈川県大和市)が経営破綻し、日本の携帯電話メーカーは風前のともしび≠ニなっている。5月には京セラなどもスマホ事業から撤退を決め、残った大手のソニーグループも海外勢に押される。米国のアップルやグーグルなどが大量生産でコストを抑えて製造する高性能端末に勝てず、国内のスマホ市場は実質的に海外勢が独占しそうな勢いだ。

FCNTは、富士通の携帯端末部門から独立したメーカー。高齢者らを念頭に使いやすさを重視し、スマホの高性能化が進む中であえてシンプルな端末を提供する戦略を打ち出したが、割安で操作もしやすい海外製スマホの登場によって業績が悪化した。帝国データバンクによると、関連会社を含めた負債総額は約1200億円に上る。

他にも国内では今年に入り、5月12日にバルミューダがスマホ事業からの撤退を表明。同15日には京セラが、個人向けスマホ事業からの撤退を表明した。国内市場でアップルに次ぐシェア2位のシャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のため、残る国内大手は実質的に「エクスペリア」シリーズのソニーグループのみとなる。

国内企業が苦戦を強いられているのは、世界販売を前提に大量生産を実現した海外勢との競争に勝てないためだ。スマホの登場以前、国内では10社以上のメーカーがしのぎを削ってきたが、国内向けの開発に注力したため、世界進出には失敗。独特の生態系を持つガラパゴス諸島になぞらえた「ガラケー」の呼称が、その象徴となった。昨年から続く円安や半導体不足などによるコストの高騰も追い打ちとなり、相次ぐ撤退につながった。

最後のとりでとなったソニーはエクスペリアシリーズを国内外で展開しているが、販売は芳しくない状況だ。ただ、同社はスマホのカメラに搭載される半導体「イメージセンサー」の金額ベースの世界シェアでは約5割を占める。設備投資を拡大し、2025年度に60%のシェア獲得を目指すという。

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