プレミアム特集「日経平均4万円へ!株高いつまで続く」の第1回は経済学者の竹中平蔵氏がこの株高の背景を暴露する。株高の原因として「日本の野党はあまりに弱すぎる」と嘆く、その理由は……。そしていつまでこの株高は続くのか。バブルは崩壊するのかーー。

■良くも悪くも自動車への依存度が高い日本経済

 景気の判断をするときに一番役にたつのは政府が出している月例経済報告です。2023年5月の月例報告では、景気は緩やかに回復していると明示しました。これまでの「持ち直している」という表現から上方修正したことになります。

 その理由にはいくつかの要因がありますが、一つは個人消費の回復です。コロナからの回復でサービス消費が盛り上がっているほか、自動車関連で回復がみられます。海外から半導体などの部品が輸入できなかった状況が解消され、自動車の供給制約がなくなったことから、自動車販売も好調に推移しています。

 また輸出が回復しています。”サービスの輸出”であるインバウンドが堅調であるほか、自動車輸出も増加しています。ここから分かることは、結局日本経済は今も自動車産業の一本足打法であるということです。良くも悪くも自動車への依存度がとても高いのです。

 第一四半期のGDPも発表され、年率換算で1.6%増でした。これは高い数字ではありませんが、マイナスの期間もあったので着実に経済は回復しています。このGDPの要因の3/4は個人消費です。また、結果的に物価が上がっており、名目GDPが3年ぶりに過去最高を更新しました。名目GDPが上がるということは税収も上がるので、財政にとって、とてもいいことです。

■33年ぶりの3万3000円、中身はそんないいもんでもない

 さて、そんな状況を受けて今、株が上がっています。日経平均は33年ぶりに3万3000円を突破しました。そんな状況下で、安心して株を買ってもいいのでしょうか。

 まずこの株高の背景には、名目GDPの上昇を理由に政府が気前よくお金を使っているということを理解する必要があります。それによって経済が”なんとなく”支えられています。増えた税収を使い過ぎないということも今の日本にとっては大切なのですが……。

 また株価が高いといってもドルベースでみると大したことありません。280ドル台まで上がった2021年には遠く及ばず、やっと240ドルを突破したような状況です。日本の経済や日本の企業が海外投資家に「良い」と判断されている面も若干はあるかもしれませんが、そもそも「安いから買っている」という面は否定できません。

 最近は一時期と比べて、メディアが円安に関するニュースを取り上げていないようです。が、昨年秋に1ドル150円つけてから一時128円まで落ちた為替相場も140円台まで戻ってきています。2023年4月に就任した植田和男日銀総裁が金融緩和を終了するのではないかと市場に警戒されていましたが、緩和の継続が当分は続きそうという見方が強まり、安心してドルが買われるようになりました。ファンダメンタルでみても、アメリカ経済に比べれば日本経済はまだまだ弱く、この円安基調は当分続くとみられます。

■この円安基調が秋ごろまで続く、もう一つの理由

 そういった背景から、この安い日本株が海外投資家に買われるという現象は秋ごろまでは続くとみています。もう一つの理由として、日本の円は未だに「セーフ・ハーバー」(安全通貨)という見られ方をしていることもあげられます。日本は野党があまりにも弱く、政治的に非常に安定していると海外投資家から評価されているのです。そのため経済政策の大きな変更は起きにくいだろう、と。ロシア・ウクライナ戦争、アメリカ政治の大混乱、中国経済の後退といった中でとりあえず安全そうな日本円を持っておこうと投資家心理が働いているのです。

 ですが、楽観視はできません。絶対に注意は必要です。たしかにアメリカと中国の対立の中で、日本経済の価値を見なされているのは事実ですし、ウォーレン・バフェットのように日本株を「もっと買おう」という動きも出てきています。しかし、正直今の株価は実態を反映していないと思います。(以下ソース)

6/23(金) 17:10配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/ceeaa8b426919de45c84ab3505d6d7252a401be5