岩手県盛岡市津志田の市都南総合支所と盛岡東署見前幹部交番の前にあるバス停に今月上旬、手作りの屋根付きベンチが無断で設置された。誰かがバス利用者のために置いたとみられるが、市は「たとえ善意でも市道への無許可設置は違法」と撤去を呼びかけた。名乗り出る人がいないまま3週間以上たった28日、ベンチに破損が見つかり、市は危険と判断して撤去した。交番前に現れた大胆な珍風景に、周辺は一時ざわついた。(盛岡総局・土屋聡史)


2ヵ所、名乗り出る人おらず 破損見つかり危険と判断
 市道路管理課などによると、今月5日に総合支所から「バス停2カ所にベンチが設置されている」と連絡があった。停留所は道路の両側にある岩手県交通の「都南総合支所前」で、ベンチは歩道上のバス停そばに置かれていた。

 木材とプラスチック板で作られ、座面の幅は二つとも約1メートル。奥行きは37センチと55センチ、高さは約1・6メートルと1・8メートルだった。プラスチックの屋根があり、地面にはベニヤ板が敷かれ、接合部はくぎやビニールテープで補強されていた。

 道路法は、32条で道に工作物を設置する際に道路管理者の許可を求め、43条は交通の支障になり得る物件の設置を認めていない。市は張り紙で撤去を呼びかけたが、設置に関係した人からの連絡や目撃情報はなかった。

 28日午前に職員が見回った際、ベンチにゆがみや破損が見られた。市は利用者がけがをする危険があると判断し、二つとも撤去。バス停の時刻表近くには、作った人に連絡を呼びかける文書を張った。

 近くに住む70代の無職男性は「ベンチの大きさからすると、車で運び込み複数人で作業したと思う。設置した人の『バス利用者に休んでもらおう』という思いやりも感じる。悪意はないだろうと思うので複雑です」と語った。

 市道路管理課の担当者は「ご厚意とはいえ、管理上の問題もあったので、撤去した」と話した。

河北新報 2023年6月29日 6:00
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