東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」が29日、2019年以来4年ぶりに開催される。主催者は例年並みの95万人の人出を予想。以前の記録などを基に事故防止に神経をとがらせる。同花火大会実行委員会の早津司朗会長(73)は「安全対策に万全を期したい」と気を引き締めた。

 4年ぶりに警備に当たる警視庁が掲げるのが“梨泰院シフト”。早津さんによると、当日警戒に当たる警察と消防は昨年10月に大規模な「群衆雪崩」で158人が亡くなった韓国・梨泰院の事故現場を視察。危険箇所を確認するなどしたという。人数など態勢は明らかにしていないが、当日はDJポリスなども投入し声による警備も実施。コロナ禍の規制も明け、警備に当たる他のスタッフも大声で群衆を誘導する。

 群衆雪崩は狭い場所に大勢の人が押し寄せることで発生。久々の開催で、例年を超える数の来場者が詰めかける可能性があることから、実行委員会も警戒している。新しい建物が立つなど4年前とは周辺の環境も変化しており、実行委員会では狭い路地など危険箇所を確認。当日は人が殺到しないよう柵で封鎖する。早津さんは「梨泰院の事件もあり、今年は例年以上に入念に危険箇所をチェックした」と話した。

 広い河川敷などに観客が集まる一般的な花火大会に対し隅田川花火大会は視界を遮る高いビルが立ち並び、広いスペースが少ないエリアで行われるため、観客が橋など周辺道路を歩きながら花火を見ることになる。そのため、行き帰りの観客誘導に加え花火が打ち上げられている最中も群衆雪崩などの事故に警戒が必要だ。当日は午後6時から最寄りの浅草駅や両国駅周辺などで歩行者の進める方向を規制するほか、例年より警備員を増員し対策を徹底する。

 コロナの影響で20年以降中止が続いていた隅田川花火大会の“復活”。早津さんは「楽しみにしていると、たくさんの人に声をかけられる。とにかく安全第一で臨みたい」と抱負を語った。

 《花火マニア・安斎幸裕さん 技術が進歩「光の変化」楽しんで》今までに全国120カ所以上の花火大会に参加してきた花火マニアの安斎幸裕さん=写真=に4年ぶりに開催される隅田川花火大会の見どころを予想してもらった。まず挙がったのが花火の技術の進歩。「新型コロナの影響で全国各地で花火大会中止となった20年以降、花火職人たちは研究を重ねてきた。今年は過去最高の盛り上がりになると思います」と期待した。

 その上で今年既に観覧した6カ所の花火大会を基に、今シーズンの花火の特徴として“光の変化”を挙げた。特に注目しているのが1玉の花火の色が徐々に変化する「グラデーション」と、明暗を繰り返しながら色が変化する「点滅」だ。グラデーションは現在1玉の花火が最大6色に変化。「今年は技術の進歩で7色に変化するかもしれない」と話した。

 花火の色も増えている。安斎さんが太鼓判を押すのが水色、ピンクなどのパステルカラー。紅、青、緑など原色に比べ火薬の調合が難しく花火で再現するのが困難だといい「多くの花火職人が力を入れており、隅田川花火大会でもきっと出てくると思う」と予想。「職人たちが3年間の思いを込めて打ち上げる花火をぜひ楽しんでほしい」と呼びかけた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/58706d992eefc0278b81c34356242fbf33ad0b87