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「早い者勝ち」な日本の漁業システム

なぜ、日本は8000キロ以上も離れた国から、サバを輸入しているのでしょうか。

一番の理由は、ノルウェー産のほうがサイズが大きいからです。

ノルウェー産の場合、1匹当たり300~600グラムで脂肪率30%以上ですが、国産の場合は200~300グラムが中心で、脂肪率も20%程度といわれています。

サイズの違いは品種の問題だけではありません。

タイセイヨウサバは脂の乗りが良く、煮魚や焼き魚に向いていますが、それはサイズが大型になるよう、水揚げ時期がノルウェー政府によってコントロールされているからです。

そこには、日本の海洋資源管理の構造的な問題があります。

1996年に国連海洋法条約への批准に際して制定された「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)」に基づき、水産庁はサバやサンマ、クロマグロなどといった「特定水産資源」の漁獲枠(獲ってもいい数量の上限)を毎年設定しています。

漁期に入ると、国内の漁業者は「ヨーイドン!」で漁獲を始め、水揚げ総量が上限に達した時点で打ち止めとなります。「早い者勝ち」な、この資源管理法はオリンピック方式、またはダービー方式と呼ばれています。

しかし、これには問題があり、すべての漁業者が「上限が来る前にできるだけたくさん獲ろう」と思うため、魚が旬を迎えるのを待たずに、漁獲枠の大部分を獲ってしまうのです。

サバでいえば、魚体が成長し脂が乗るのを待たずに、水揚げされてしまう。

日本でサイズが大きく脂が乗ったサバが獲れない原因のひとつはここにあります。これは漁業者の収益性の面でも不利です。

さらにこのオリンピック方式には、魚が未成魚のまま水揚げされてしまうものも出てくるため、漁獲枠が逆に漁業の持続可能性の障害となります。

サバは近海魚の中では長寿で知られています。寿命が長いぶん、成魚となるにも時間がかかり、生殖ができるようになるまで2~3年がかかります。

このままでは、国内におけるサバの漁獲枠をますます削減しなければいけない可能性もあります。世界のサバの漁獲量は右肩上がりですが、日本では40年で約3分の1にまで激減しています。

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FNNプライムオンライン
2023年8月20日 日曜 午前8:00
https://www.fnn.jp/articles/-/568761