身寄りのない高齢者の増加に伴い、入院時の身元保証や葬儀などを一手に引き受ける民間サービスでトラブルが相次いでいる。政府は法規制も視野に対策を検討するため、実態把握の調査に乗り出した。ただ、民間の需要が増えるなかでの規制には課題も多そうだ。

 岸田文雄首相は8月7日、身寄りのない高齢者を取り巻く現状を視察するため、東京都の豊島区役所を訪れた。同区は、65歳以上の一人暮らしの高齢者の割合が35・6%(2020年の国勢調査)で、全国の区市で最高。首相は視察後、記者団に「安心して民間事業者による身元保証などのサポートを受けられる仕組みを作る」と語った。

 65歳以上の全国の高齢独居世帯は20年に672万世帯となり、00年の303万世帯から倍増した。少子高齢化に伴い、身寄りのない高齢者が今後も増えるのは確実だ。入院や施設に入所する際の身元保証の代行や財産管理、死亡後の火葬や遺品処理などで支援を必要とする人も少なくない。ケアマネジャーらが本来の業務とは別に対応するケースもあるが、民間事業者も増え、悪質業者によるトラブルも相次ぐ。事業者が経営破綻(はたん)し、預けたお金が契約者に返還されない事件も起きている。

 消費者庁によると、消費生活センターに寄せられた相談件数は13〜21年度で年平均100件を超す。「年金を預かると言われて渡した通帳と印鑑を返してもらえない」「解約したいが返金額に納得できない」といった声が寄せられている。

 トラブルの背景には、提供されるサービスが多岐にわたり、一つひとつを適正に選ぶのが難しいこと、契約内容が複雑になりがちなこと、死後の事務に要する費用が生前に預託する仕組みとなる場合が多いことなどが指摘されている。

 だが、政府の対応は遅れてい…(以下有料版で,残り1198文字)

朝日新聞 2023年9月4日 5時00分
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