政治家が減税をやらない言い訳の常套句がある。それは「減税は法改正が必要なために時間がかかる」というセリフだ。

 そして、彼らは散々時間をかけた挙句、税率自体を引き下げる形の減税は絶対にやらず、特定の対象にのみ政策減税(利権誘導)を実施する。その上で、政策減税の対象にならない層には「単なるバラマキ政策のほうが直ぐに実行できるので如何でしょう」と嘯いている。

 国会議員が然も尤もらしく語ると、「減税は法改正が必要なために時間がかかる」は、事情を知らない国民には一定の合理性がある主張のように見えるかもしれない。しかし、このような頓珍漢な言い訳を許していたのでは、日本の政治のレベルはいつまで経っても低いままだ。

 筆者は政治家と減税について会話するたびに、耳にタコができるほどにこのフレーズを聞いてきた。もはや初めて耳にしたのが何時になるかすら忘れてしまった。(時間がかかるにしてもとっくに減税できていないとおかしいほどに・・・。)

さて、実際のところ、通常のペースで減税を実現する法改正を行うにはどの程度の時間がかかるのだろうか。

 「税制改正を伴うものは年末の税制調査会の議論を経て法改正した上で実行する」、これが現在の与党の税制改正のプロセスである。つまり、大規模な税制改正の時期は原則として1年に1回しかなく、法改正が伴う税制の変更を行うには、12月に実施される与党税調の了解が必要となる。

 12月の与党税調に向けて、毎年のように役所や業界団体が税制改正要望を提出する。与党税調ではそれらの要望に〇△×の成否判定が行われる。そして、その判定結果を反映した税制改正法案が内閣から翌年の通常国会に提出されることになる段取りである。与党税調は様々な事情に配慮し、主に特定の業界向けの政策減税(租税特別措置)を決定している。

 「減税は法改正が必要なために時間がかかる」という主張は、この利権まみれでチンタラした従来通りのやり方を是とするものだ。しかし、日本国の税制改正プロセスが自民党が作り上げた税制改正の慣習に絶対服従しなければならない必然性など存在しない。

国民からしてみれば、「減税は法改正が必要なために時間がかかる」は、それは貴方の政党の内部事情の問題であり、国民側は知ったことではありません、というだけの話だ。税制改正に時間がかかるのは、法改正自体ではなく、そこに至るまでの役所と与党の政策決定手続きの都合でしかない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8cf0c417c69c1a9f3a560ce8656b464835e73ad2