令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判は、起訴前後に精神鑑定を行った2人の医師への証人尋問が終わった。6日午前10時半から京都地裁で開かれる第16回公判では、被告の刑事責任能力に関して検察、弁護側がそれぞれ意見を述べる中間論告・弁論を行う。被告の他責的なパーソナリティーが事件を起こしたと主張する検察側に対し、弁護側は精神障害の影響を訴えるとみられる。

分かれた鑑定結果

10月30日の前回公判では、焦点である被告の妄想を巡り、2人の医師への尋問が実施された。2人は、検察側の依頼で精神鑑定した大阪赤十字病院の和田央(ひさし)医師と、弁護側の求めで裁判所が依頼した東京医科歯科大大学院の岡田幸之(たかゆき)教授(司法精神医学)。証言台の前に並んで座り、尋問に答えた。

和田氏は被告について、人格の著しい偏りとされる「妄想性パーソナリティー障害」と鑑定。一方で、岡田氏は精神疾患である「重度の妄想性障害」との鑑定結果を示している。

「意外と信頼された」

和田氏は妄想性パーソナリティー障害について「パーソナリティーの著しい偏りをきっかけに妄想を抱く」と説明。一方で妄想性障害は「病的なメカニズムがあって妄想が生じる」との考えを示し、被告の妄想は「正常の心理で起こり、思い込みに近い」とした。

これに対し、岡田氏は妄想性障害と妄想性パーソナリティー障害の違いは「妄想がしっかりあるかどうか」と指摘。妄想性パーソナリティー障害の特徴の一つは、猜疑性(疑い深さ)の有無だとした。被告と10回以上の面接を重ねた中で「意外と信頼してくれていた」ことや、言葉尻から悪意を受け取ることがなかったことを例に、妄想性パーソナリティーの診断を避けたと述べた。

妄想、犯行に「影響なし」

ならば妄想が動機形成に関わっているのか。両者の意見は真っ向から対立する一方、犯行そのものへの妄想の影響はいずれも否定している。動機形成に妄想が影響したと鑑定した岡田氏だが、放火の方法や計画については「妄想は関係なかったと思う」と明言している。

次にある裁判員が問うた。人生の「つっかえ棒」(被告)だった小説について、「青葉さんが小説を書き続けていたら、事件を起こすことはなかったですか」と。これに対し和田氏は被告との面会時の会話を引用し「『小説投稿サイトで5人でも読み手がいたら、こんなことにならなかった』と話していたのが印象的だった。小説を書き続けられたかが大きな事情だ」。岡田氏も「もし書き続けていたら事件を起きにくくする方向に傾いたと思う」と述べた。

続きはソースで
https://www.sankei.com/article/20231106-I6VAS53GIZJZXPXQTY7UGLYVJ4/