大手回転ずしチェーン店で全皿わさび抜きが目立つのはなぜ-。読者から疑問が寄せられた。近年各店では、わさびを別添えにするスタイルが定着している。理由を尋ねると「本来のおいしさを味わってもらうため」という意外な答え。好みの多様化などを指摘する声もあり、時代の変化も垣間見える。

テーブル上で容器に入れられたわさび。来店客は好みに応じて取り出し、ネタに直接付ける。

県内に6店舗を構える「くら寿司」(大阪府)は2008年、ネタとシャリにわさびを挟む従来の提供方法を変更。同社によると、大手でいち早く全皿をわさび抜きにした。

レーンを回る間にわさびの風味が落ちるのを防ぐのが大きな理由。本社担当者は「時間が過ぎるにつれてわさびの風味や辛みが弱まるのが課題だった」と説明する。

以降、「スシロー」(同)が15年から小袋入りのわさびを導入するなど他の店も続いた。ファミリー層の取り込みという業界の経営戦略も影響しているとみられる。

鹿児島市の主婦今吉麻美さん(36)は「子供が安心して食べられ、量を調整できるのもいい」。自身はわさび入りを好む同市の主婦北山範子さん(38)も「子供用としてさび抜きを頼む手間が省ける」と歓迎する。

21年に初出店した「すしざんまいS鹿児島天文館店」の山本将博店長(41)は「好みの幅が広がっている」と実感する。外国人観光客も増え、アジア系の人は辛さを求める傾向が強い。「わさびが入っていないことを指摘するのは主に60代以上。若い世代は好きなものを好きな方法で食べたいと望んでいるのでは」とみる。

ある店舗関係者は「クレーム対策の側面もある」と明かす。インターネット上には飲食業界の対応を批判する書き込みが見られる。「さび抜きの注文を間違えて客とトラブルになるケースを防ぎたいのも本音」と語る。

鹿児島の地元店「めっけもん」は、客の要望に応じてさび抜きを提供する従来型を維持する。板場に立つ永吉進さん(51)は「魚の生臭さを消し、味を引き立たせるのがわさびの魅力。今後も日本の食文化を伝えたい」と語り、「特徴が異なる各店を回り、それぞれの良さを味わってもらえれば」と呼びかける。

ソース/南日本新聞社
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