いくらでもある「不正卒業証書」発行のエピソード
 2017年には、教育分野に強いエジプト人女性ジャーナリスト、ダリヤ・シェブル氏(カイロ大学のマスコミ学部で学士と修士を取得、エジプトの私立大学で准教授を務める)がFacebookなどのSNS上で“不正卒業証書”を販売している複数の業者に接触し、実態を記事にしている。
 ある業者は、「大学内部の記録まで捏造して“不正卒業証書”を発行する場合は40日、そうでない場合は20日で納品できる」と言ったという(大学内部の記録を捏造できるというのは、学内に協力者がいることを意味する。業者の1人は「自分にはカイロ大学、アイン・シャムス大学、ファイユーム大学、ザガジグ大学内に協力者がいる」と話した)。
 またシェブル氏が業者に依頼したところ、業者が実際に彼女の名前でカイロ大学のメディア・サイエンスの博士号の証書を発行し、ヨルダン人の知人にカイロ大学の医学士(外科)の証書を発行したという。
 さらに、アイン・シャムス大学の“不正卒業証書”で検査部門の医師として働いている人物に会い、アイン・シャムス大学医学部の“不正卒業証書”で実際にクリニックを開業し、整形外科医として患者を治療している人物が存在すること、ミニヤ大学工学部(建築学)の“不正卒業証書”でUAEの建設会社でエンジニアとして働いている人物がいることも突き止めている。
 エジプトの薬剤師協会は取材に対し、“不正卒業証書”を利用して多数の入会申し込みがなされていると回答し、同弁護士会も過去2年間で約30件の“不正卒業証書”を利用した入会申し込みがあったと回答した。またカイロ大学工学部は学部のスタンプが盗まれたことを認めた。