今年はいよいよ東京オリンピックが開催されます。オリンピックそのものについては多くの人が楽しみにしていると思いますが、オリンピックがもたらす経済効果については様々な意見があります。一部の人は、オリンピック後の反動不況を心配していますが、そもそもオリンピック特需は限定的だとの見方もあります。オリンピックを境に日本の景気はどうなるのでしょうか。
ここ数年、東京や大阪など大都市圏では、大規模な再開発案件が目白押しとなっており、次々と新しいビルが建設されています。一部の人は、この様子を見て「オリンピック特需で景気は良くなっている」と思ったり、逆にオリンピックが終わった後はどうなってしまうのかと不安になっています。
しかしながら、これら大規模開発の大半はオリンピックとは直接関係していません。
確かにホテルや複合施設の一部は、オリンピックに伴う観光客増加を前提に開発が進められています。競技場周辺の開発など、オリンピックのイベントに直接関係する地域の案件がオリンピック特需であることは説明するまでもないでしょう。
一方で、大都市で進められている大型のオフィスビル建設はオリンピックとは直接関係していません。このところ景気がよくない状況が続いており、オリンピック特需とも関係しないのに、なぜ大規模開発が行われているのでしょうか。その理由は、日銀が進めてきた量的緩和策にあります。
安倍政権は日銀が国債を積極的に購入するという量的緩和策の導入を決断し、金融市場には大量のマネーが供給されました。本来であれば、これらのマネーは企業の設備投資などに回ると予想されていましたが、経済の先行きが不透明であることから、企業は工場や店舗などへの投資を積極的には行っていません。
その結果、金融市場には行き場のない大量のマネーが溢れる結果となり、銀行は融資先の開拓に苦慮するようになりました。こうした中で、唯一、安心して大量の資金を融資できる先というのが、大都市圏のオフィスビルだったわけです。オフィスの需要がそれほど伸びていないのに新築のビルを建設しても、空室ばかりになりそうですが、実はそうではありません。
新しく建設されたビルが、多少、家賃を犠牲にして安めの賃料を提示すれば、周囲の古いビルからテナントを奪ってくることができます。経済全体では誰かが損をしているわけですが、オフィスビルを新しく建設するデベロッパーと、そこに融資する銀行は直接的には損をしません。その結果、需要をはるかに上回るオフィスビルが次々と建設されるという異常事態になっているのです。これがオリンピックの時期と重なったことから、オリンピックの影響で次々と新しいビルが建設されているというイメージにつながったわけです。
これらの大型開発の中でオリンピック特需が占める比率は低いですから、オリンピックが終わったからといってこうした開発がピタッとなくなってしまうわけではありません。需要を上回るビルを建設することについては、最終的に大きな問題を引き起こすと筆者は見ていますが、それが顕在化するのはもう少し先のことでしょう。したがってオリンピックの終了で一気に不景気になるというシナリオは、現時点では考えにくいと思います。
しかしながら、2020年は景気がよくなるのかというとそれはまた別問題です。2020年からはこれまで大企業のみが対象だった残業規制が中小企業にも適用されますし、同一労働同一賃金の導入で、一部の正社員は手当が大幅に削減される見込みです。賃金が上がる非正規社員もいますが、昇給になったからといって消費を一気に拡大するとは考えにくく、全体的に消費は低調に推移しそうです。
またオリンピックの直接的な効果に対する企業の期待も、以前と比較するとかなり下がっています。調査会社である帝国データバンクが2019年10月に行った調査によると、経済成長のために東京オリンピックは有効であると回答した企業は47%しかなく、2013年の調査と比較すると大幅に低下しました。また、自社に対する影響という点でも、大企業はプラスの影響があると考えているようですが、企業規模が小さくなるにつれて、プラスの影響があると回答する割合が減っています。
以前と比較するとオリンピックに対する企業の期待は小さくなっており、恩恵は一部の大企業に限定されるとの認識が広がっているようです。
新国立競技場
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200114-00021492-mimollet-000-view.jpg
渋谷
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200114-00021492-mimollet-001-view.jpg
1/14(火) 8:00配信 全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200114-00021492-mimollet-ent
ここ数年、東京や大阪など大都市圏では、大規模な再開発案件が目白押しとなっており、次々と新しいビルが建設されています。一部の人は、この様子を見て「オリンピック特需で景気は良くなっている」と思ったり、逆にオリンピックが終わった後はどうなってしまうのかと不安になっています。
しかしながら、これら大規模開発の大半はオリンピックとは直接関係していません。
確かにホテルや複合施設の一部は、オリンピックに伴う観光客増加を前提に開発が進められています。競技場周辺の開発など、オリンピックのイベントに直接関係する地域の案件がオリンピック特需であることは説明するまでもないでしょう。
一方で、大都市で進められている大型のオフィスビル建設はオリンピックとは直接関係していません。このところ景気がよくない状況が続いており、オリンピック特需とも関係しないのに、なぜ大規模開発が行われているのでしょうか。その理由は、日銀が進めてきた量的緩和策にあります。
安倍政権は日銀が国債を積極的に購入するという量的緩和策の導入を決断し、金融市場には大量のマネーが供給されました。本来であれば、これらのマネーは企業の設備投資などに回ると予想されていましたが、経済の先行きが不透明であることから、企業は工場や店舗などへの投資を積極的には行っていません。
その結果、金融市場には行き場のない大量のマネーが溢れる結果となり、銀行は融資先の開拓に苦慮するようになりました。こうした中で、唯一、安心して大量の資金を融資できる先というのが、大都市圏のオフィスビルだったわけです。オフィスの需要がそれほど伸びていないのに新築のビルを建設しても、空室ばかりになりそうですが、実はそうではありません。
新しく建設されたビルが、多少、家賃を犠牲にして安めの賃料を提示すれば、周囲の古いビルからテナントを奪ってくることができます。経済全体では誰かが損をしているわけですが、オフィスビルを新しく建設するデベロッパーと、そこに融資する銀行は直接的には損をしません。その結果、需要をはるかに上回るオフィスビルが次々と建設されるという異常事態になっているのです。これがオリンピックの時期と重なったことから、オリンピックの影響で次々と新しいビルが建設されているというイメージにつながったわけです。
これらの大型開発の中でオリンピック特需が占める比率は低いですから、オリンピックが終わったからといってこうした開発がピタッとなくなってしまうわけではありません。需要を上回るビルを建設することについては、最終的に大きな問題を引き起こすと筆者は見ていますが、それが顕在化するのはもう少し先のことでしょう。したがってオリンピックの終了で一気に不景気になるというシナリオは、現時点では考えにくいと思います。
しかしながら、2020年は景気がよくなるのかというとそれはまた別問題です。2020年からはこれまで大企業のみが対象だった残業規制が中小企業にも適用されますし、同一労働同一賃金の導入で、一部の正社員は手当が大幅に削減される見込みです。賃金が上がる非正規社員もいますが、昇給になったからといって消費を一気に拡大するとは考えにくく、全体的に消費は低調に推移しそうです。
またオリンピックの直接的な効果に対する企業の期待も、以前と比較するとかなり下がっています。調査会社である帝国データバンクが2019年10月に行った調査によると、経済成長のために東京オリンピックは有効であると回答した企業は47%しかなく、2013年の調査と比較すると大幅に低下しました。また、自社に対する影響という点でも、大企業はプラスの影響があると考えているようですが、企業規模が小さくなるにつれて、プラスの影響があると回答する割合が減っています。
以前と比較するとオリンピックに対する企業の期待は小さくなっており、恩恵は一部の大企業に限定されるとの認識が広がっているようです。
新国立競技場
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200114-00021492-mimollet-000-view.jpg
渋谷
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1/14(火) 8:00配信 全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200114-00021492-mimollet-ent