熊本地震では震度7の揺れに2度も見舞われ、住宅の耐震性に改めて課題が突きつけられた。熊本地震以降も鳥取、福島沖と地震が続発し、南海トラフ巨大地震への懸念も高まる。南海トラフでの地震は、東日本大震災より、震源が陸地に近いため、東日本より揺れによる被害が厳しいとされている。建築基準法では、地震のリスクに応じた地域別の指標や、地盤に応じた建築指針が定められているが、震度7級の地震対策をするには、住宅事情に応じた対策強化が求められる。

 建築基準法は、過去数百年の地震発生頻度に応じたリスク評価指標「地域地震係数」を各都道府県別に設けている。

 地震が多いと評価された首都圏や東海、近畿地方の係数は「1・0」。地震が多くないと評価された沖縄、中四国、九州、北陸、東北の一部、北海道は「0・7〜0・9」で、首都圏や東海、近畿に比べ、リスクを低減し設計していいことになっている。

 しかし、このほど巨大地震に見舞われた熊本県は、市役所が損壊した宇土市は「0・8」、熊本市は「0・9」だった。さらに、建築構造の専門家によると、係数が「1・0」でも平成7年の阪神大震災級の震度7に対応するには十分でないという。また、南海トラフ巨大地震の国の想定では「震度7」とされている和歌山が「1・0」に対して、西隣の高知は「0・9」となっており、矛盾が生じている。

 一方、東海地震で震度7の被害が懸念される静岡県は、係数を独自に「1・2」に引き上げて備えている。同県は「阪神大震災など近年の地震被害から判断した」としており、係数を上げると、建築コストは増大するが、「1〜3%程度のコスト増で済む」という。

 熊本地震では、火山灰の堆積などによる地盤の脆弱(ぜいじゃく)性が指摘された。

 建築基準法では、液状化が想定されるなど、弱い地盤に家屋を建築する場合、家屋と地面との間に「ベタ基礎」を設けることを推奨する。ベタ基礎は、建物の底面一面を鉄筋コンクリートで固める工法で、建物と底面の一体化を図ることで、地盤が崩れても建物を倒壊させないよう目指すという。

 ベタ基礎が採用されていない家屋の場合、「揺れの影響を受けやすい建材の接合部分『仕口』に、揺れを吸収する耐震補強材を設置し、倒壊を免れることを目指す配慮が必要」(1級建築士の樫原健一氏)。

 南海トラフ巨大地震の被害想定をまとめた河田恵昭・関西大特任教授は「各地の行政や住民は居住地の被害想定や、建物の耐震性について正しい知識を得て、(独自の地域地震係数を設定した)静岡県のように、自分たちの財産を守るために必要な方法を実施すべきだ」と呼びかける。

http://www.sankei.com/smp/west/news/170415/wst1704150022-s1.html