《変色の詳しい経緯》※一部略※誤字訂正
■何も知らない業者が検疫用薬剤で処理
絵金は、高知県赤岡町(現香南市)にある、江戸末期の絵師金蔵の略称で、金蔵の描いた歌舞伎を題材とした屏風絵23作品を含む素描画などが残っており、毎年、夏に町内に展示されるだけでなく、各地に貸し出されています。

熊本市現代美術館は、10年3月27日に屏風絵を保管する絵金蔵に出品を依頼し、翌月、同運営委員会から作品の貸出しが承認されました。
出品依頼に「本画の燻蒸は当館(熊本市現代美術館)で行うものとする。」となっていました。
燻蒸について、絵金蔵では、7月20日から27日までの間に、日本通運が処理をすることを知っていましたが、どのような燻蒸剤を使えという指示はしなかったそうです。
貸し出された屏風絵5点は、7月21日から5日間、日本通運熊本支店の倉庫内で、梱包したまま、リン化アルミニウムにより天幕燻蒸されました。
美術館側は、7月27日、展示のため、梱包を解いた際、はじめて、屏風絵すべてが、部分変色(特に緑の部分が黒ずむ)していることに気がつき、絵金蔵に連絡し、その後、原因調査を東京文化財研究所に依頼しました。

美術館が処理を委託したのは日通でしたが、処理実施者は、北九州市に本社をおく池田防疫興業でした。
この会社の業務内容をみると、『穀物青果物、木材、コンテナ、動物等の輸出入検疫燻蒸業務はもとより、環境衛生害虫駆除施工業等にも鋭意進出しています。』となっており、美術品等の処理については、記載がありません。
同社は作品を梱包したまま、恐らく、検疫燻蒸用に持っていたリン化アルミニウム錠剤を使ったと思われます。

高知新聞の調査記事(10月4日)は『燻蒸処理した業者は、文化財燻蒸の資格を持たず、熊本市現代美術館は2002年の開館以来、燻蒸の研修、経験が全くなく、
今回も専門知識のない日通に任せ切りにし、下請けの燻蒸業者名や薬剤、作業状況を一切把握していなかった。』と問題点を指摘しています。