https://mainichi.jp/articles/20170420/k00/00m/040/158000c

公益社団法人「全国老人福祉施設協議会」(全老施協、東京都千代田区)が、
役員や関係者の高級飲食店での飲食費を「会議費」として処理するなど不適正な
支出を繰り返していたとして、公益法人を監督する内閣府の公益認定等委員会に
報告を求められたことが関係者への取材で分かった。不適正な支出は2013年度から
16年度途中までで約3300万円に上るとみられる。内部で批判が高まり、ほぼ全ての
理事が辞任する事態に発展している。

全老施協は06年に社団法人として設立、09年に公益法人に移行した。
特別養護老人ホームやデイサービスセンターなど約1万1500の施設・事業所が加盟し、
運営費の8割以上を会費で賄う。特養ホームと医療の連携の調査研究などで厚生労働省から
14年度に約2200万円、15年度に約820万円の補助金を受けている。

毎日新聞が入手した内部資料によると、会議費は少なくとも13年度約980万
円▽14年度約1250万円▽15年度約880万円▽16年度上半期約200万円−−
が計上されていた。

内訳を見ると、14年7月には、元会長で一周忌を迎えた中村博彦・元参議院議員の
「偲(しの)ぶ会」を東京・赤坂の料亭で開き、参加者から計12万円を会費として受け取る一方、
14人分の飲食代約54万円を会議費として支出。銀座のクラブでの2次会は11人分55万円を
全て会議費として処理した。

15年10月に12人が参加した「介護福祉を考える会」では赤坂の料亭と銀座のクラブで計約95万円。
他にも高級飲食店を月数回の頻度で利用し、会議費として処理していた。関係者は
「現職の国会議員が参加した会合もあった」と話す。

不適正支出を知った公益認定等委員会は、昨年11月に全老施協の立ち入り検査を実施。
資料を基に不適正支出を確認し、一部の役員が頻繁に飲食していた実態も把握したという。
今年1月、文書で「法人としての管理・運営能力の欠如が疑われる。公益法人認定法に違反している
恐れがある」として、支出の実態や再発防止措置の詳細な報告を求めた。

全老施協は第三者組織を設け、2月に委員会に調査結果を報告した。
しかし、再発防止策などが不十分だったため再報告を求められた。3月の総会で会長を含む
理事29人中28人が辞意を表明し、一部の理事が損害を賠償する考えを示したという。

全老施協は毎日新聞の取材に「委員会への報告が終わるまでは応じられない」と回答を拒否。
委員会は「調査中の案件についてはコメントできない」としている。

【ことば】公益認定等委員会

複数の都道府県で活動する公益法人の認定を審査・監督する首相の諮問機関で、
2007年4月に内閣府に設置された。法人の適正な運営を確保するため、立ち入り検査や
報告を求める権限があり、認定基準に適合していない疑いがある場合は勧告や命令、
認定取り消しを答申できる。内閣府による認定取り消しは「日本ライフ協会」など4例ある。
公益法人は登記のみで設立できる一般法人と違い、税制上の優遇がある。