東芝の半導体メモリー事業売却を巡り、事業を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)が、米半導体大手ブロードコムへの事業売却に強く反対していることがわかった。ブロードコムは独占禁止法上の障害が少なく売却先の有力候補の一つと見られていたが、WDは東芝との独占交渉権を主張し、訴訟も辞さない構え。WDは、官民ファンドの産業革新機構と政府系の日本政策投資銀行に協力を要請し、自社への事業売却を東芝に強く求める方針だ。

 WDは東芝に提出した9日付の意見書で、WDの同意がない半導体メモリー事業の売却は共同企業体(JV)の協約違反に該当すると主張。さらに、ブロードコムが2014年にWDの有力取引先を買収した後の取引方法が「信義に反した」と不満を表明し、同社への売却には「重大な懸念がある」と指摘した。

 半導体メモリー事業を巡っては1次入札の結果、WDとブロードコムに加え、台湾電子機器受託製造大手の鴻海(ホンハイ)精密工業と韓国半導体大手SKハイニックスの4陣営が有力となっている。

 ブロードコムは、東芝の半導体メモリーと用途が異なる通信用半導体を生産しており、WDやハイニックスに比べ、独禁法に抵触する可能性が低い点が有利と見られてきた。だが、東芝と四日市工場(三重県四日市市)で半導体メモリーを共同生産するWDの強硬な反対で、関係者の間では「WDの意見は無視できず、ブロードコムへの売却は難しくなった」との見方が出ている。

 経済産業省などは日本企業に協力を呼び掛け、革新機構、政投銀などと米企業を加えた「日米連合」を模索している。WDが革新機構などに協力を要請する背景には、日本側の出資を受け入れることで政府の後押しを受ける狙いがあるとみられる。

 一方、鴻海は傘下のシャープなどの日本企業や、アップル、アマゾンなどの米企業とともに「日米台」連合を構想している。【坂井隆之、宮川裕章】

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