一般のウェブサイトに不正なプログラムを仕込み、突然、パソコンがウイルスに感染して乗っ取られたように装う偽の画面を表示させたうえで、ウイルス駆除の名目で料金を要求する巧妙な手口の詐欺が広がっています。セキュリティーの専門機関は、被害の相談が相次いでいるとして注意を呼びかけています。
情報処理推進機構によりますと、この手口は、一般のウェブサイトを閲覧中に、突然、音声とともに、画面いっぱいに「パソコンがウイルスに感染した」という偽の警告が表示されるのが特徴です。

そして、マウスのマークが勝手に動き回ってパソコンが乗っ取られたように見せかけ、指定の番号に急いで電話するよう音声で指示されます。
そこで電話をすると、担当者を名乗る人物が出て遠隔操作でウイルスを駆除したように見せかけたあと、サポート料金の名目で金を要求されるということです。

これまでに報告されている偽の警告画面が表示される場所は、情報サイトや音楽関係のサイトなどさまざまです。何者かが広告の部分に不正なプログラムを仕込んで表示させていると見られますが、実際にはパソコンがウイルスに感染していることはありません。

こうした手口は「偽サポート詐欺」と呼ばれ、情報処理推進機構には毎月200件から300件の相談が寄せられていて、中には数万円をだまし取られたケースもあるということです。

情報処理推進機構の野澤裕一さんは「偽の警告画面は、いつでも、だれにでも現れる可能性があり、利用者を錯覚させる手口も巧妙化している。こうした画面を見ても慌てず、詳しい人に相談するなどだまされないよう気をつけてほしい」と話しています。

■対処法は?

情報処理推進機構では、偽の警告画面が表示されても、慌てて電話をかけることは絶対にしないよう呼びかけています。

そして、パソコンを再起動するか、キーボードの「Alt」キーと「F4」キーを同時に押す、「Alt」「Ctrl」「Del」の3つのキーを同時に押すといった方法で画面を消してしまえば、パソコンは問題なく使えるということです。

■被害男性「電話対応で怪しいと感じず」

埼玉県春日部市に住む47歳の会社員の男性は、先月6日の未明、インターネットでニュースを見ていたところ、被害に遭ったということです。

突然、警告画面が表示されて、パソコンがウイルスに感染したと信じ込み、電話をすると、ぎこちない日本語を話す女性が出て、遠隔操作のソフトをインストールするよう求められました。言われるままにインストールすると、遠隔操作で何かをする様子が表示されたあと、ウイルス駆除の料金を求められ、クレジットカードで支払う手続きをしたということです。

その際のカードの明細には、日本円にしておよそ1万6000円が、中国の通貨「人民元」で何者かに支払われたと表示されていました。その後、不審に感じた男性が情報セキュリティーの専門機関に相談したところ、だまされたことがわかったということで、「最近のサポートセンターは、外国人の担当者も多いと思っていて、電話対応の間は怪しいとは感じませんでした。ふだんは注意していますが、突然の画面と音声に動転し、だまされて悔しいです。巧妙なやり方だったので、こういった手口が広く知られて、今後、だまされる人が出ないよう願っています」と話していました。

■業者に電話取材すると一方的に切れる

偽の警告画面に表示されていた番号は、「03」の市外局番で始まり、記者が電話をかけてみると、女性の声で応答がありました。

女性がぎこちない日本語で「サポート会社のハギワラ」を名乗った直後、「あなたはこの会議から退出させられました」という機械音のような音声が流れ、一方的に電話が切れました。このため、もう一度同じ番号にかけると、今度は別の女性が出ました。

パソコンの画面に表示された警告の意味を尋ねると、やはりぎこちない日本語で、「パソコンにエラーがたまっている。問題を解決しないと元に戻らない」と話し、専門家が遠隔操作をすると解決できるとしたうえで、料金は1万5000円と告げられました。さらに話を聞こうとすると、説明の途中で、突然、1度目と同じ音声が流れ、電話が切れました。

さらにもう一度、電話をかけると、今度は男性の声で応答がありました。電話が途中で切れたことを告げると、ぎこちない日本語で、前の担当者がわからないので、今度は自分が担当するとして、「イト」と名乗りました。記者が、日本語のわかる担当者に代わってほしいと告げたところ、やはり一方的に電話を切られました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170504/k10010970811000.html