2000年に起きた茨城県牛久市の強盗致死事件で、同県警は2日、何らかの事情を知っている可能性があるとして、防犯カメラで撮影されていた男性4人の動画を公開した。

 容疑者と特定していない「重要参考人」の公開捜査は異例だが、県警は動画について「唯一の手がかり」と説明する。専門家からは、人権侵害になりかねないと慎重な対応を求める声が出ている。

 事件は2000年5月4日午前0時半頃に発生。牛久市中央のスーパー「マルヤ」(当時)の駐車場で、同市岡見町の藤井大樹さん(当時17歳)が4人組の男に約20分間にわたって暴行を受け、脳挫傷で9日後に亡くなった。4人は藤井さんから現金数千円を奪って逃走した。

 動画は、事件の数時間前に現場から数キロ離れたコンビニ店で撮影され、県警は藤井さんと一緒にいた女性の証言に基づき、映っていた4人を「重要参考人」とみている。

 この事件では、県警が過去に同じ4人の似顔絵を公開したが、少年の可能性があるとして取りやめた経緯がある。その後、警察庁が03年に出した「凶悪犯罪で再犯のおそれが高く、捜査上ほかに方法がない場合には、少年の写真などを公開できる」とする通達を受け、04年5月に似顔絵を改めて公開した。同通達の適用は全国初だった。

 しかし、有力な情報は得られず、情報提供は年々減り、15年は0件。新たな情報提供を求め、県警は昨年11月、防犯カメラに映っていた4人を静止画の形で公開し、今回は動画そのものを公開した。谷津成久・捜査1課長は「捜査を尽くしたが、動画が唯一の手がかりだ。少年と断定する根拠もなく、慎重に検討して公開を決めた」と話す。

 ただ、動画の公開には課題もある。似顔絵は、事件を間近で目撃した女性の証言を基に作られ、犯人性が高く「容疑者」として公開した。一方、動画は女性の「似ている」という証言が根拠で、犯人性が低いとして「重要参考人」とした。

 事件と無関係だった場合は人権侵害になりかねず、当時少年だった可能性も残っている。武内謙治・九州大教授(刑事法学)は「通達にない重要参考人の公開捜査には、より厳しい条件が求められる。少年の可能性があればなおさらだ」と話した。諸沢英道・元常磐大学長(刑事法)は「重要参考人という言葉は、あたかも犯人のような印象を与え、名誉毀損きそんになるおそれがある」と指摘した。

2017年05月05日 11時37分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170505-OYT1T50023.html?from=ytop_ylist