南アフリカ北部の地下洞窟で見つかった多数の古人類化石について、2015年にホモ(ヒト)属の新種「ナレディ」に分類した国際研究チームが、年代は33万5000年前から23万6000年前と推定されると発表した。
現生人類ホモ・サピエンスはアフリカで約20万年前までに出現したとみられており、共存していた可能性が高いという。

しかし、世界的に著名な古人類学者の諏訪元・東京大教授は発表を疑問視。
「古くても約33万年前という年代は誤差要因が大きいのでもっと古い可能性がある。

100万年以上前から60万年前ぐらいの原人から旧人への移行期に由来する古人類ではないか。
新種に分類すべきか、まだ分からない」と話している。

発見場所の地下洞窟は世界遺産に登録された遺跡群付近にある。
大規模で複雑な構造をしており、石器や火を使った跡、大型肉食動物の化石は見つかっていない。

南アフリカのウィットウォーターズランド大のリー・バーガー教授らが米ナショナルジオグラフィック協会の資金で調査し、13年9月以降、洞窟の一部で子どもや大人の少なくとも15人分の化石を発見した。
全身の骨格の大半がそろい、大人の身長は約150センチ、体重は45キロ程度と推定された。
手や足は現生人類に近いが脳容量が小さく、頭や肩、骨盤などは約200万年前の初期ホモ属に近いという。

バーガー教授らは15年9月、新種「ナレディ(現地語で星)」に分類したと英生物学誌イーライフに発表した。
だが、この論文は放射性物質などを利用した年代分析を行っていなかったほか、「洞窟は遺体を捨てるのに使われた」と根拠なく強調し、批判された。

今月9日付の同誌論文では、歯に含まれる微量の放射性物質や洞窟内の石灰岩の分析に基づく年代推定を実施。
また、洞窟の別の場所で新たに少なくとも3人分の化石を発見したと発表した。

このうち頭骨の形をほぼ復元できた大人の男性は「ネオ(贈り物)」と愛称が付けられ、脳容量は610ミリリットルと推定された。
バーガー教授らは、化石の年代は比較的新しくても、ナレディの骨盤などの特徴から、出現した時期は250万〜200万年前にさかのぼる可能性があるとしている。

これに対し、諏訪教授は「脳容量が小さいこと以外は、それほど古い特徴はない」と否定。
その上で「原人または初期の旧人の全身にわたる形態が初めて分かる重要な化石だ」と評価し、科学的に丁寧な分析と議論を積み重ねる必要があるとの考えを示した。

写真:南アフリカの地下洞窟で発見された古人類の成人男性(愛称ネオ)の頭骨(写真左)と全身骨格(同右。いずれもウィットウォーターズランド大提供)。
ホモ属の新種「ナレディ」への分類に対し、疑問視する意見がある
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解説図:http://www.jiji.com/news/kiji_photos/20170528ax04.jpg

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017052800348&;g=soc