新潟県三条市の金属加工会社など3社が、障害者スポーツの「アイススレッジホッケー」で使用するそり(スレッジ)を開発している。

 国内で開発例がないスレッジを製造することで自社の技術力をアピールするとともに、世界で活躍する選手を支える狙いがある。

 4月27日、新潟市中央区の「新潟アサヒアレックスアイスアリーナ」で行われたスレッジの試走会。日本代表で主将を務める須藤悟選手(46)は、試作中のスレッジでリンクを滑り、ターンしたときの感触を何度も確かめていた。

 スレッジ開発のきっかけとなったのは、国定勇人・三条市長の一言。2016年6月に設立された一般社団法人「スポーツによる地方創生推進会議」(東京)に「三条のものづくりの技術を生かし、スポーツへ貢献できないか」と提案したのだ。

 同推進会議などを通じて日本アイススレッジ協会に話が持ち込まれた。同協会は国産のスレッジの必要性を感じていた。アイススレッジは北米で盛んな競技だが、国内では認知度が低く、スレッジの確保も海外からの輸入頼り。海外製のスレッジはプレー中の接触で壊れやすく、輸入でコスト面での負担も大きかった。スレッジ製造は高い技術が必要で、三条市と同協会の思惑が一致する形となった。

 三条市の呼びかけで手を挙げた田辺プレスなど3社が開発を担った。16年から市の補助金約100万円を活用。同11月に日本代表の合宿地でスレッジの仕様や形状を視察し、今年2月に初の試作品を完成させた。

 しかし、見よう見まねで作ったスレッジは選手が座る「バケット」の位置や刃の部分の「ブレード」の位置がずれ、実戦で使えなかった。須藤選手からは「バケットとブレードを体の重心に合うようにしてほしい」「試合中の衝突でナットがゆるむので出来るだけ使わないで」などと指摘された。

 これを受け、バケットの位置をスライド式にして微調整できるようにした。ナットもゆるまないように金属部分に直接組み込んだ。4月の試走後、須藤選手は「全体的にバランスが良くなった。精度を高めれば実戦に耐えうるので、本番で使えるようにしてほしい」と評価した。

 今秋に行われる18年の平昌ピョンチャン冬季パラリンピック最終予選に間に合うよう、3社は今後も改良を重ねる。田辺プレスの田辺和夫専務(66)は「良い結果につながるよう、選手の要望に応えたい」と話していた。

 ◆アイススレッジホッケー=下半身に障害がある人のために、アイスホッケーのルールを一部変更した競技。氷上に立つのは1チーム6人で、スレッジに乗り両手に持ったスティックで、相手ゴールにパックを入れた得点を競う。国内の競技人口は約40人で、「氷上の格闘技」とも呼ばれる。日本代表は2010年のバンクーバー冬季パラリンピックで銀メダルを獲得した。

2017年06月03日 09時20分 読売新聞
http://sp.yomiuri.co.jp/economy/20170601-OYT1T50019.html?from=ytop_main7

スレッジの感触を確かめる須藤選手(新潟市中央区の「新潟アサヒアレックスアイスアリーナ」で)
http://yomiuri.co.jp/photo/20170601/20170601-OYT1I50010-1.jpg