東芝が進める半導体メモリー事業の売却を巡り、所管する経済産業省が、韓国の半導体大手SKハイニックスと米ファンドのベインキャピタルの陣営に、官民ファンドの産業革新機構を加えた「日米韓連合」を検討し始めた。
これまで米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)とブロードコムの2陣営が有力とされてきたが、新たな構想の浮上で、東芝が当初予定していた15日に買い手を絞り込むのは困難な見通しだ。

これまでの選定作業で、売却先候補には、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と革新機構、日本政策投資銀行に、
東芝と三重県四日市工場で協業するWDが参加する「日米連合」▽ブロードコムと米ファンドのシルバーレイク▽SKハイニックスとベインキャピタル▽台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業−−の4陣営が残り、WDを含む日米連合とブロードコムの陣営が有力とされてきた。

だが、ここにきて有力2陣営が決め手を欠いている。WDはメモリー事業の売却に反対して国際仲裁裁判所に申し立てを行い、それを受けて東芝が対抗措置をとるなど対立が激化。
9日にWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)が来日して東芝の綱川智社長と会談をしたが、平行線に終わった。

WDは買収額の引き上げや、各国の独占禁止法に抵触しない買収案を再検討しているが、「譲歩案が出てもWDに決めるのは難しいのでは」(政府関係者)との見方がある。

一方、ブロードコムは、半導体の種類が異なることから独禁法の審査が通りやすいとの見方が強いうえ、2兆円超の買収金額を提示していることで東芝や主力取引銀行内にも「しっかりした提案内容」との評価がある。
だが、買収・売却に積極的な経営方針から、経産省内に「転売される可能性がある」との懸念が出ている。

経産省は技術流出への警戒から中国と関係の深い鴻海の買収に強く反対してきた経緯があり、ブロードコムに対しても不信感があるため「消去法」でSKハイニックスが浮上したようだ。

ただ、SKハイニックスを選定しても、独禁法の審査が課題として残る。東芝と同型の半導体メモリーの世界シェアはSKハイニックスが世界5位(米調査会社IHS調べ)。
1位は韓国のサムスン電子で「韓国に半導体が集中することを良しとしない米国と中国の独禁法審査が厳しくなる」(アナリスト)との声もある。

銀行関係者からは「経産省の横やりで、構図が複雑化する一方」との声も出ている。東芝は6月28日の株主総会までに売却先を絞り込みたい考えだが、先行きは見通せていない。【古屋敷尚子】

東芝の半導体メモリー事業を巡る構図
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配信 2017年6月14日 22時09分(最終更新 6月14日 22時17分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170615/k00/00m/020/117000c