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荻原千明2017年6月28日15時29分

 会社と株主の対話ともいわれる株主提案をめぐり、法相の諮問機関「法制審議会」の会社法制部会で、議案の数や内容の制限が検討されている。権利乱用とみられるケースがあるのが背景だが、「会社の意に沿わない提案を拒まれることにならないか」と不安の声を上げる株主もいる。

 「オフィス内の便器はすべて和式とし、足腰を鍛錬し、株価4桁を目指して日々ふんばる旨定款に明記する」「取締役の社内での呼称は『クリスタル役』とし、代表取締役社長は代表クリスタル役社長と呼ぶ旨定款に定める」――。

 野村ホールディングス(東京)の5年前の株主総会で、ある株主が提案した議案が諮られた。元々の提案は100あったが、うちこれら18議案が総会に付議され、全て否決された。

 昨年1月〜今年3月に公益社団法人「商事法務研究会」(同)が開いた会社法研究会で、この事例が「乱用的」と取り上げられた。法務省職員も研究会メンバーで、株主提案権の制限がいるかどうかなどが検討された。

 大量提案への会社の対応をめぐって訴訟になった例にも触れた。光学機器メーカーのHOYA(同)の2008〜10年の株主総会で、ある株主が一度に最大114議案を提案しようとし、招集通知への記載などを請求。同社側は削減を求めたり、記載しなかったりした。株主は「株主提案権を侵害された」と損害賠償を求めて提訴。東京地裁は同社側に3万3千円の支払いを命じたが、二審の東京高裁は「権利の乱用に当たる」などと請求を退け、最高裁で確定した。

 同社コーポレート企画室の担当者は「海外投資家から『理解に苦しむ』との声もあった。株式発行会社としては、規制があった方がいいと思う」と話す。