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2017/7/4 21:30

 強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」が相次いで見つかっている。大阪港では女王アリと巣とみられる穴も確認された。ヒアリは定着すると駆逐するのが難しい。国土交通省や環境省はすでに国内で繁殖している恐れがあるとして、港湾を管理する自治体に警戒と対策強化を求めている。

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大阪港で見つかった女王アリ(環境省提供)
 環境省は6月30日、大阪港でヒアリに似た毒を持つ「アカカミアリ」が見つかったことを受け緊急調査を実施。約100匹のアリを採取した。殺虫剤をまいた地面を3日に再び調べたところ、アスファルトの割れ目から女王アリや羽アリを含む約50匹の死骸が出てきた。

 同省は4日、大阪港のアリをヒアリと断定し、1匹は女王アリだったと発表。巣を作っていた可能性が高いという。また、羽アリは風に乗ると10キロメートルほど移動できるため、同省は港湾周辺に巣がないかさらに調査を進める。

 国交省は女王アリの確認を受け、全国の933港を管理する自治体などに対し、発見時の速やかな連絡を要請した。ヒアリは生息地の中国などから輸入される貨物に紛れて上陸したとみられ、同省は東京港や横浜港など中国との定期貨物便を運航する63港にはコンテナを扱う区域「ヤード」とその周辺に殺虫餌を設置するよう求めた。

 ヒアリは5月26日に兵庫県尼崎市で初確認されて以降、神戸、名古屋、大阪の各港で見つかっている。九州大学の村上貴弘准教授(昆虫学)は「続けて見つかったのは中国などで爆発的に増えているためではないか」と話す。

 ヒアリの女王アリは1日に2000〜3000個の卵を産むとされ、いったん定着すると、完全に駆除するのは困難。米国では経済的な損失が年間に数千億円と試算されている。2001年に侵入が確認されたニュージーランドは1つの巣に1億円以上を投じて2年がかりで根絶に成功した。オーストラリアや中国でも多額の費用をかけて駆除を進めている。

 国内に定着した可能性について、国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長は「現状では評価できないが、潜伏していて10年後に爆発的に増える可能性もある」と予測。港周辺の緑地や公園の警戒態勢の強化が必要と訴える。

 ▼ヒアリ 体長が2.5〜6ミリほどの小型のアリで、体は赤茶色。熱帯原産だが、亜熱帯や温帯でも生息できる。腹にある毒針で刺されるとやけどのような激痛が生じるため「火蟻(ひあり)」の名がついた。ショック症状が出ると死ぬこともある。

 在来のアリと競合すると、巣を襲って全滅させる。「世界の侵略的外来種ワースト100」に分類されており、環境省は2005年に特定外来種に指定した。