カエルは脊椎動物の中でも多様性に富んでいて、6700種類ものカエルが地球上には存在するのですが、進化の歴史を紐解くには遺伝子データが不足していたため、なぜカエルの種類がこれほどにも多岐にわたっているのかは分かっていませんでした。しかし、中国・中山大学の研究チームが行った調査によって、現存するカエルの88%の子孫はほぼ同時期に生まれていたことが判明。そしてこの多様化は、6600万年前に小惑星が地球に衝突し恐竜が絶滅を迎えた時に起こったものと見られています。
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Frog evolution linked to dinosaur asteroid strike - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-40482039

研究者らは、まず、156種類のカエルのDNAから95の遺伝子のコアセットを抽出し、さらに過去に発表された145種類以上のカエルの遺伝子情報と合わせて、遺伝子的な「カエルの系統樹」を作成しました。その後、カエルの化石から抽出した「根源」となる遺伝子データを使って、系統樹にタイムラインを加えていったとのこと。カエルにはHyloidea(アマガエル上科)、Microhylidae(ヒメアマガエル類)、Natatanura(アカガエル科)といったグループが存在しますが、系統樹をたどっていくと3つのグループのカエルは6600万年前を起源としていたそうです。

中山大学のPeng Zhang教授は「これまで誰も見たことのない結果が現れました。我々は複数のパラメータの設定を用いて、繰り返し解析を行いましたが、結果は同じでした。解析データが示すシグナルは強力で、間違えようがないのです」と語りました。また、研究に参加したフロリダ自然史博物館のDavid Blackburn氏も「カエルは2億年前から存在しましたが、恐竜の絶滅が起こるまで、我々が現在目にしているほど多様なカエルは存在しなかったのです」と語っています。

小惑星衝突は地球上の大部分の生命を死に至らしめましたが、その後、森林は回復していき、カエルは新しい環境に素早く適応した生物グループの1つになったと見られています。樹木を生息地とするカエルらの祖先は全て小惑星衝突に続く形で生まれていることが、この説を裏付けています。

また、研究者らは、現在のカエルの種の分布はパンゲア大陸やゴンドワナ大陸といった超大陸の分裂と関係していることも示しています。白亜紀に入ると、西ゴンドワナ大陸はアフリカ大陸と南アメリカ大陸に分裂、東ゴンドワナ大陸はインド亜大陸及びマダガスカル島と、南極大陸及びオーストラリア大陸に分裂したのですが、このとき、カエルたちは南極大陸を利用して南米やオーストラリアにまで広まっていったとのこと。

「私たちの研究で示されたことのうち、私がもっとも興奮するのは、カエルが非常に強いグループの生き物であるということです。恐竜を完全に消滅させ、多くの種が全滅した出来事から、彼らは生き残ったのです」とPeng Zhang教授は語りました。核爆弾の10億倍といわれるエネルギーの小惑星衝突の影響で、地球上の生命の4分の3が死に絶えましたが、カエルにとってはこれが新たなる進化のステージだったわけです。一方で、現代では生息場所が減少し、多くの種が危機にさらされています。


2017年07月05日 07時00分00秒
http://gigazine.net/news/20170705-frog-evolution-dinosaur-asteroid-strike/