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2020年の東京オリンピックを控え、海外からの訪日客が増え、都内の鉄道でも外国人観光客が目立つ。
外国人の日本の鉄道に対する評価は高く、「清潔」「正確」「便利」といった声もよく聞かれるが、観光庁が行った訪日外国人のSNS分析では、「わかりづらい」「運賃が高い」といった声も多い。
これはきめ細かに鉄道網が張り巡らされ、列車頻度は多く、車内や駅のトイレなども清潔であることに外国人が驚いている反面、鉄道会社が複数あり、
ICカードを持っていないとたびたび切符を購入しなければならず、また運賃合算額が高額になることが原因として挙げられよう。

消費者庁が平成25(2013)年に調査した公共料金の内外価格差では、地下鉄について初乗り運賃で比較している。
日本(東京メトロ)を100とすると、アメリカ(ニューヨーク)159、イギリス(ロンドン)233、フランス(パリ)148、ドイツ(フランクフルト)131となっており、日本がいちばん安い。
しかし、外国人からは地下鉄の運賃が安いという声はあまり聞かれず、むしろ高いという印象を持っている人が多い。
日本を訪れる韓国人からは「韓国では物価が上がり、食べ物や居住費は日本より高いと感じることも多くなったが、鉄道をはじめとした交通費は日本のほうがかなり高い」という意見をよく聞く。

■違う鉄道会社を乗り継ぐと割高に

物価の国際調査の結果と異なるこうした意見の原因は、日本では都市交通において鉄道事業者が複数あり、それぞれが独立採算で経営しているために、
たとえ直通運転している区間であっても鉄道事業者ごとに規定する初乗り運賃が加算されていくからであろう。
移動距離は短くても違う鉄道事業者を乗り継ぐとかなり割高になる。下記に例を挙げる。

西巣鴨駅―(都営地下鉄)―巣鴨駅―(JR)―駒込駅―(東京メトロ)―西ケ原駅
計3.5キロメートル⇒490円(ICカード472円)

これは3社線を利用した例だが、それぞれが短い区間の乗車でも3回初乗り運賃が足されるので高額になっている。内外価格差の調査では単純に1鉄道事業者の価格を国際比較しているが、乗り継ぎが必要な場合にこのような高額運賃になってしまう。
さらに駅が徒歩圏内になく、駅まで、あるいは駅からバスを使うのであれば、都内の都バスだと1回210円(ICカード206円)がさらにかかり、移動がかなり高額になるのが実情である。

また、各社それぞれが収支見込みに応じて運賃を申請し、国が認可しているので、鉄道会社ごとに運賃も異なる。よく議論に上がるのが、東京メトロと都営地下鉄の運賃差である。
初乗り運賃はメトロが170円(ICカード165円)、都営が180円(ICカード174円)、10キロメートル圏の運賃はメトロは200円(ICカード195円)だが、都営は270円(ICカード267円)である。
また、東京メトロは初乗りの距離が6キロメートルまでであるのに対して、都営は4キロメートルである。したがって、6キロメートルの距離だと東京メトロが初乗り運賃の170円(ICカード165円)であるのに対して都営は220円(ICカード216円)と差が大きい。

猪瀬直樹都知事(当時)が都営地下鉄と東京メトロの経営統合に力を入れ、九段下駅の都営地下鉄新宿線と東京メトロ半蔵門線のホームの壁を「バカの壁」と呼んで、地下鉄が2社に分かれていることの弊害を社会にアピールをしていたが、その後、経営の統合は進んでいない。

鉄道事業者の数も増える一方だ。りんかい線は東京臨海高速鉄道株式会社、東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅から以北は事業者が変わって埼玉高速鉄道株式会社の路線になるなど、新しくできる鉄道が既存の鉄道事業者とは別の事業者によるものが多い。
多額の初期費用をそこだけの運賃で回収するため、高運賃になりやすく、また他社線との乗り継ぎや乗り換えで初乗り運賃が加算され、さらに高額になってしまう。

>>2以降に続く

配信 2017年07月05日
東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/178582?page=2

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