安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡り、衆院文部科学、内閣両委員会合同の閉会中審査が10日、行われた。
参考人の前川喜平・前文科事務次官は、国家戦略特区で新設が認められた経緯について「はじめから加計学園に決まるようにプロセスが進んだように見える。

非常に不合理な意思決定だった」と証言。また萩生田光一官房副長官が関与したことを示す昨年10月7日付の文書について、「次官在職中に受け取った」と存在を認めた。

■萩生田発言文書「存在」

加計学園問題に関して前川氏が国会招致されたのは初めて。首相は欧州歴訪中で出席していない。

昨年10月7日付の文科省文書は「萩生田副長官ご発言概要」と題し、萩生田氏が文科省側に対して「四国には獣医学部がないので、その点では(新設の)必要性に説明がつくのか」「加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな」などと発言したとされる。
同省は6月15日に発表した再調査結果で「文書は見つからなかった」としていた。

しかし前川氏はこの日の審査で「私が在職中に担当課から説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」と明言。
「背景に首相官邸の動きがあったと思う。和泉洋人首相補佐官がさまざまな動きをしていた」と改めて官邸の関与を主張し、「順次条件を付けて加計学園しか残らないようにしたのはなぜか。ブラックボックス化されている」と批判した。

萩生田氏は当日文科省の常盤豊高等教育局長と面会したと認めたが、「このような発言をした記憶はない」と反論。同省に文書を非公表とするよう求めた事実もないとした。

一方、文科省が国会閉会後の6月20日に公表した昨年10月21日付の「ご発言概要」は、萩生田氏が「総理は平成30(2018)年4月開学とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」と通告。
学園の事務局長を同省の担当課長に引き合わせる考えを伝えたとしている。

この文書について、常盤氏は「個別のやり取りは明確な記憶がないが、事実関係は私から副長官に説明した」としたうえで、「副長官から何らかの指示を受けた記憶はない」と述べた。
なぜ首相の意向と記されたかは「平成30年4月開学は省内でシミュレーションし、内閣府と厳しいやり取りもあった」などとあいまいな説明にとどめ、「(文書は当日)言及がなかった情報も含まれ、正確性に欠ける」と釈明した。

また、国家戦略特区担当の山本幸三地方創生担当相は、首相が意欲を示した獣医学部新設の全国展開に関し、「特区でやってみて、大丈夫なら全国展開するのが原則だ。
首相は原則論を言っており、個別にどこかを早くやるとか首相が指示することはあり得ない」と首相を擁護した。しかし前川氏は「まず今治(加計学園)の成果を評価することになり、10年は必要。今すぐ2校目、3校目はできないと思う」と指摘した。

審査には、政府の国家戦略特区諮問会議の下にあるワーキンググループの委員を務める政策コンサルタント、原英史氏も参考人として出席。「加計ありきではない」などと新設の正当性を主張した。

衆院の閉会中審査は午前9時から行われる予定だったが、民進党が提出する資料の取り扱いを巡って与野党の協議が長引いたため、20分以上遅れて始まった。
午後2時からは参院文教科学・内閣両委員会が合同で審査を行う。【高橋恵子】

衆院文部科学、内閣両委員会の連合審査会で学校法人「加計学園」に絡む文部科学省の文書などについて答弁に向かう前川喜平・前文部科学事務次官(左)。右は萩生田光一官房副長官=国会内で2017年7月10日午前9時51分
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配信 2017年7月10日 11時32分(最終更新 7月10日 13時18分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170710/k00/00e/010/218000c