http://www.bbc.com/japanese/40578921

私たちは実際どれだけ活動しているのか。米スタンフォード大学の研究チームが、スマートフォンから「惑星規模」の量のデータを集め、国・地域別の平均歩数を割り出した。

研究チームは、合計6800万日分の分単位のデータを分析。その結果、世界的な1日の平均歩数は4961歩だと結論した。

1日の平均歩数が最も多かったのは6880歩の香港で、最も少なかったのは3513歩のインドネシアだった。

調査結果からは、肥満対策にも使えるかもしれない興味深いディテールも浮かび上がった。

ほとんどのスマートフォンには加速度計が内蔵されており、歩数計の役割も果たす。研究チームは行動記録アプリ「ARGUS」を使う70万人以上の匿名データを調べた。

研究に参加したスコット・デルプ教授(生体工学)は、「人間の活動に関するこれまでの研究より1000倍規模のものだ」と説明。「健康データについて過去にも素晴らしい調査は行われてきたが、我々の新調査は対象の国も人数も多く、人の活動を継続的に追跡している」。

「かつてない規模で科学的調査を実施する、新しい扉が開かれる」とデルプ教授は話す。

国ごとの歩数は
中国――6189歩
日本――6010歩
スペイン――5936歩
英国――5444歩
ブラジル――4289歩
アラブ首長国連邦(UAE)――4516歩

活動格差と性差

科学誌「ネイチャー」に発表されたこの研究調査と筆者たちは、人の健康改善につながる重要な知見が得られたと指摘する。
たとえば、国・地域ごとの平均歩数そのものは、肥満度にそれほど重要ではないようだという。
鍵となる要素は「活動格差」で、経済格差が富裕層と低所得層の違いを意味するように、「活動格差」は最も身体能力が高い人と、最も動かない人の違いを意味する。
この「活動格差」が大きければ大きいほど、肥満状態にある人の割合が増える。

研究に参加したティム・オルソフ氏は、「たとえばスウェーデンは、活動の多い人と少ない人の格差が最も少ない国のひとつで、肥満した人の割合が最も少ない国のひとつでもあった」と指摘する。

米国とメキシコは同じような平均歩数だったが、米国の方が「活動格差」が大きく、肥満の割合も高かった。
研究者たちは、男女の行動の違いが活動格差に大きく影響すると知って、驚いていた。

日本のように、肥満度も活動格差も低い国では、男女の活動量はほぼ同じだった。

しかし米国やサウジアラビアのように活動格差の高い国では、女性の活動量が少なかった。

研究に参加したユーレ・レスコベチ准教授(コンピューター科学)は、「活動格差が最大だと、女性の活動量は男性のよりはるかに劇的に減少する。そのため、肥満との負の関連は、女性により大きい影響を与えることがある」と説明する。

スタンフォード大の研究チームは、この調査結果は世界全体の肥満状況を理解し、新しい対策を編み出す手助けになると指摘する。たとえばデータをもとに、米国の69都市について、徒歩移動がどれだけ簡単あるいは困難かを数値化した。

その結果、ニューヨークやサンフランシスコといった都市は歩行者に優しく「とても歩きやすい」街だと分かった。その一方で、ヒューストンやメンフィスなどの都市は自動車がないと移動しにくく、「歩きにくい」街だと分かった。
そして想像通り、歩きやすい場所に住む人の方がよく歩いていた。

このデータを使えば、住人が活発に運動する街並みを設計しやすくなるはずだと、研究チームは言う。

(筆者の情報開示――私の昨日の歩数は1万590歩だったが、日曜はたったの129歩だった。これは台所のテーブルに電話を1日中置き忘れていたから。それが僕の言い訳であって、曲げるつもりはない)

(英語記事 Do you live in the world's laziest country?)

ジェイムズ・ギャラガー健康科学担当記者、BBCニュース