0001みつを ★
2017/07/13(木) 18:08:04.49ID:CAP_USER9遠望すると、カステッルッチョはこの1000年間で変わっていないように見える。イタリアで最も高名な平野の一つ、ピアノ・グランデの真ん中にある丘の上の美しい村だ。
しかし村の下の道路からでも、建物が崩れ、屋根が崩壊しており、ウンブリアの田舎よりも戦場を想起させる景色が見える。
イタリア中部のこの地域に壊滅的な被害を与えた地震から1年近くが経ち、訪れる人たちはカステッルッチョ近くのいわゆる「ゾーナ・ロッサ」(イタリア語で立ち入り禁止区域の意味)に戻ることをようやく許可された。ただ村自体にはまだ戻れない。
立ち入り禁止区域はまだ危険なため入ることができないとみなされている区域だが、「ラ・フィオリトゥーラ」が見れるよう、例外が設けられた。ピアノ・グランデの牧草地帯に咲く野生の花が、目を見張るほど開花する風景のことだ。
シビッリー二山脈の高所にある軍が封鎖する道路を通行するため、約40台の車の列に加わった。
多くの村でこの地域を襲った地震の影響が見える。最初の地震は2016年8月、次は10月に起こった。
このような村を見ると、地震は1年近く前ではなく、つい先ほど起こったかのようだ。村の住人の大半は沿岸部のホテルに移り、暮らしている。
高い尾根の上で車を降り、2時間かけて平野まで歩いて下った。平野からはウンブリア州とマルケ州の境となるベットーレ山のごつごつした山頂が見える。
山の斜面の上の方に、地震後に出てきた深く黒い割れ目が見えた。
平原に降りてくると、印象派の絵画を彷彿(ほうふつ)とさせるような、尋常でない色彩の数々が視界に飛び込んできた。
牧草地は一帯のけしの花で薄い赤色に染まり、他の場所はヤグルマギクで鮮やかな青色になっていた。普段は、華やかな花の写真を撮るため、1日に1万人が訪れていたと説明された。今年、1日の訪問者数は1000人に満たない。
この野原は、人の数よりもミツバチの群れの方が多い。
かつて氷河湖だったピアノ・グランデは、16平方キロにわたる文字通りの大平原で、山に囲まれている。
世界中の美食家たちの間で有名になった農作物のレンズ豆を、カステッルッチョの農家の人たちはここで育てているのだ。
農家の人たちは今年、来シーズンに備えるために村に入るのに、複数の車が一緒でないと入れてもらえなかった。ゴーストタウンならぬゴーストビジレッジと化した標高1452メートルのこの村に入るのを許される人はいない。
家族が何世代も暮らしてきた故郷を上方に望みながら、ロレンツォ・カポネッチさんは、レンズ豆や野生の豆を道路わきの屋台で売っている。
なぜ再建開始に時間がかかっているのだろうと不思議に思った。建物が古すぎるからだろうか。それとも金銭的な問題だろうか。
「違う」と、カポネッチさんのパートナー、モニア・ファルツェッティさんは腹立たしげに言った。「国と政治家のせい。EU(欧州連合)からたくさんお金はもらっているのに、私たちの目には一切触れないんです」。
かつてカステッルッチョの住人だった他の人たちは、支援の少なさに立腹しており、ピアノ・グランデへの訪問者の立ち入りを禁止すべきだと考えている。
これでは、がれきで人を呼び寄せる「がれき観光産業」だと、彼らは訴える。
しかし地元の村長はイタリアの日刊紙「レプブリカ」に対し、ピアノ・グランデの花はカステッルッチョの人たちだけのものでないと話した。世界の遺産であり、何よりも、観光客が増えれば地元経済の支援になると言うのだ。
比類ないこの渓谷の中で、最も見事な景色として自然の荘厳な美しさを見られるのと同時に、最も破壊的な姿の自然の力も目の当たりにする。
何百年も存在し続けた家々が、ほんの一瞬で崩れ、石に戻ってしまったのだ。
マーサ・カーニー、BBCラジオ4司会者
2017/07/13
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/C9D3/production/_96876615_gettyimages-811362996.jpg