「医学部新設、百害あって一利なし」、改めて反対
全国医学部長病院長会議、文科相などに要望書

全国医学部長病院長会議は3月11日、緊急記者会見を開き、
「医学部(医科大学)新設について慎重な対応を求める要望書」
を下村博文文科相に提出したことを明らかにした。2008年度以降
、医学部の入学定員増を図り、地域枠も増えた一方、医学部を
新設した場合にその効果が現れるには時間がかかる上、臨床教員
を地域から確保することにより、病院勤務医の不足が加速すると
し、「医学部新設で医師数の増加を目指すのは、百害あって一利
なし」と指摘、医学部新設に対し、「慎重かつ適切な対応を要望
する」とした。国立大学医学部長会議も、11日に同様の見解を下
村文科相に提出している。

全国医学部長病院長会議会長で埼玉医科大学学長の別所正美氏は
、要望書を提出した経緯について、「文部科学省と厚生労働省が
2012年9月に、『地域の医師確保対策2012』で、既存の医学部定員
増で対応するという方針を出し、一定の方向性が見えてきたと思った。

しかし、ここに来て自民党の一部の議員から、医学部新設という
話が出てきたので、改めて意見を出した」と説明。全国医学部長
病院長会議は、民主党政権の2010年2月にも、同様の要望書を提出
している(『「医学部新設は、百害あって一利なし」、民主党に
要望書』を参照)。

下村文科相の受け止め方について、別所会長は、「医学部を新設
しても、(医師が一人前になるまでには)10年以上かかり、その頃
には医師過剰時代になるなどの点は、よく理解しているようだ。

ただ、国民に対し、『よく説明してほしい』というリクエストが
あった。今の医師不足に対する具体的な対処法、国民が満足する
具体策を提示して、国民に説明してほしいという要望もあった。

これは大学ではなく、行政などと一緒に取り組んでいくべき内容だ」
と説明。

 「自民党の議連では、東日本大震災の復興のシンボルとして医学
部新設を求めている」ことについての感想を聞かれ、別所氏は「心
情的にはよく理解できるが、やはり日本の国全体を考えた上で判断
をしないと、問題が生じる。大局的な見方が必要」と回答。「医学
部を新設する場合、被災地以外から臨床教員を連れてくるなどの条件
付けが必要ではないか、という議論も議連内にある」との問いには
、「現実問題として、医師が派遣できる地域はあるのか。

どこもギリギリでやっているのが現状ではないか」と別所会長は答えた。

 さらに、既存の医学部の定員増について、別所会長は、「余力は
まだあるが、医学部定員を限りなく増やすのではなく、今程度の定
員数でしばらく効果を見ながら、また検討することが必要ではない
か」とコメントした。「一人の医師養成に1億円近い費用が必要。

その大部分は国費で賄われている。一部には、医師をどんどん養成
して、医師過剰にすればいいという声もあるが、それは非常に危険
な意見。限られた国費は有効に使い、養成した医師は十分に働いて
もらうことが必要」(別所会長)。


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