7/18(火) 7:00配信 北海道新聞

・タトゥー隠せるシール販売も

 入れ墨(タトゥー)をした人の利用を容認する温泉やスーパー銭湯などが道内で増えてきた。これまでは暴力団関係者の排除を目的に大半の施設が利用を断っていたが、ファッションや風習などでタトゥーを入れた外国人観光客が増加しているためだ。一方、「怖い」「威圧感がある」などの理由から、拒否感を抱く利用者も多く、施設側は対応に苦慮している。

 「タトゥーのある客は基本的にお断りしますが、実際は黙認しています」。館内に「タトゥーお断り」の看板を掲げる後志管内ニセコ地区の温泉宿泊施設の担当者は、こう打ち明けてくれた。冬は利用客の9割が外国人。そのうち7割はタトゥーが入っているという。ただ、「夏は日本人客も多く、気にする人が多い。グレーな対応だが、特にトラブルはない」と話す。

 札幌市定山渓地区にある温泉施設はタトゥーの大きさにかかわらず一律に利用を断っているが、館内でタトゥーを隠せるシール(縦12・8センチ、横18・2センチ)を販売する。「知らずに来てしまった人には、隠してもらうなどして周りに配慮してもらう」という。「子どもが好奇心で指を差すのを気にする親もいる」ことなどから、今後も対応を変えるつもりはないという。

 一方、札幌市中央区の女性専用の温浴施設「こみちの湯ほのか」は、「一つが縦20センチ、横20センチ以内の大きさで、合計2個までの場合は入館可能」とし、明確な基準を設けている。

・「不快」「怖い」 根強い拒否感

 タトゥーと温泉の問題に詳しい札幌市の中村憲昭弁護士(45)によると、タトゥーをした人の利用を制限する法律や条令はない。中村弁護士は「日本では戦後の任侠(にんきょう)映画の影響で、入れ墨=ヤクザというイメージが植え付けられており、社会通念で規制を続ける施設が多い」と説明する。

 観光庁が2015年に全国の温泉施設を対象に行ったアンケートでは、約6割がタトゥーをした客を断っていると回答。理由の多くは「風紀、衛生面」への懸念だった。札幌市内のスーパー銭湯の担当者は「利用客が嫌がるので全面的に断っている」と話す。

 温泉フリーマガジン「ゆ〜ゆ」を発行する「ライフラボ」(横浜)が、15年秋に読者約1200人にアンケートを行ったところ、タトゥーのある人について49%が「不快」、24%が「怖い」と回答した。

・グレーゾーン設ける必要も

 一方、13年に顔に入れ墨をしたニュージーランドの先住民族マオリの女性が道内の温泉施設で利用を拒否され、議論を呼んだ。これを受け、観光庁は昨年、タトゥーのある外国人旅行者が温浴施設を利用する際の施設側の対応事例集を作成。シールで隠したり、利用者が少ない時間帯に入ってもらうなどの例を挙げ、宗教、文化、ファッション等のさまざまな理由でタトゥーをしている場合があることに留意するよう呼び掛けた。

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