政府は、天皇陛下の退位と改元の期日を9月に決定して公表する方向で検討に入った。

 当初は来夏の公表を想定していたが、前倒しすることで政府の準備作業が進み、スムーズな移行が可能になると判断。国民生活への影響も考慮した。自民党総裁選などの政治日程と重なるのも避ける。来月にもこうした方針を発表する。

 新元号に関しては、名称を公表した後に異論が出るなどの事態を避けるため、退位日の直前に公表する案が浮上している。ただ、この場合、カレンダーの刷り直しや官民のシステム変更がすぐに対応できない恐れもあり、経済的な混乱をいかに抑えるかが課題となる。

 6月に成立、公布された退位特例法は2020年6月までの法施行日に陛下が退位すると規定。具体的な退位の期日については、三権の長と皇族らで構成する皇室会議の意見を聴いた上で政府が政令で定めるとしている。

 政府が検討している段取りは、18年12月下旬に陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位を実現させた上、翌19年元旦に改元する日程が軸。一方、宮内庁を中心に、各種皇室行事が集中する年始の改元を避けるため、「19年3月末に退位・新天皇即位、同4月1日に改元」とする案もある。9月の時点でいずれかに決まる見通しだ。

 陛下は退位すれば「上皇」となる。政府は退位の日程が定まれば、上皇を補佐する新たな組織やお住まいの整備、新元号の検討などの準備を本格化させる。「早く退位日が決まれば、政府は準備作業を進めやすい」との利点がある。

 また、来年は重要な政治日程が重なる。1月召集の次期通常国会では、安倍晋三首相が目指す憲法改正発議の行方が焦点で、9月には首相の自民党総裁任期が満了、総裁選が実施される。12月の衆院議員任期切れを控え、衆院解散も取り沙汰される。スケジュール前倒しは、退位日決定を「静かな環境」(政府関係者)で行う狙いもある。
▽退位・改元の段取り
 先の通常国会で成立した天皇陛下の退位に関する特例法は、施行日に陛下が退位し、皇太子さまが直ちに新天皇に即位すると規定。施行日は政令で定めるとし、その際、首相に前もって皇室会議の意見を聴くよう義務付けている。

 新天皇の即位後は、皇位継承の証しである「剣」と「璽」などを受け継ぐ「剣璽等承継の儀」や、即位を公に宣明する「即位礼正殿の儀」、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る「大嘗宮の儀」といった一連の儀式が行われる。退位の儀式をどうするかも検討課題だ。

 新元号の制定は1989年の昭和から平成への改元手続きを基本的に踏襲する考えで、有識者らの意見を基に決定する。当時は1月7日の昭和天皇逝去を受け、今の陛下が同日中に即位。「正化」「修文」と合わせた3候補から平成が選ばれ、翌8日に改元された。

想定される今後の日程
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配信2017/07/26-18:49
時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017072601064&;g=pol