0001悪魔の妖精 ★
2017/07/27(木) 16:56:22.74ID:CAP_USER9港に着くと蓋井島自治会長の中村求(もとむ)さん(65)が待っていてくれた。漁業が本職の中村さんが、エミューを飼い始めたのは15年ほど前になる。当時は子どもが少なく、島を訪れた人から「さびしいから何か飼ったら」と声をかけられた。「それで休耕田も多いので飼うことになったんです」
中村さんが運転する軽トラックで雑木林に囲まれた山道を10分ほど走ると、大きな空き地が見えてきた。木製の柵を入ると、エミューが集団でこちらに走ってくる。ぽん、ぽんという独特の鳴き声に褐色の穏やかな目、茶色の毛並み。近づいてもこわがる様子はない。中村さんが、用意したトウモロコシの粉をえさ箱に入れると盛んに首を伸ばす。今は島内3カ所で約40羽を飼育している。
オーストラリア原産のエミューをどうやって育てるか。中村さんらはオーストラリアまで出向き、飼育方法を学んだ。そこで見たのが、脂肪から作るエミューオイルだ。先住民の秘薬だったとされるオイルは、切り傷や炎症の治療、保湿など幅広い用途で使える。試行錯誤の結果、10年前から販売を始めた。「当時は3人だったけど、今ではエミュー飼育部会を作り、島民のほとんどが入ってくれています」と中村さんは話す。現在は、受注生産をしている。
島の売店で、小さな容器に入ったオイルが売られていた。試しに買って帰り、風呂上がりに乾燥した肌に付けると、すうっと浸透していく。
「エミューがいる島を多くの人に知ってほしい」と中村さんは笑顔を見せた。元気に駆け回るエミューと質の高いオイル。響灘に浮かぶ小さな島には、他にはない魅力があふれている。
https://mainichi.jp/articles/20170724/ddl/k35/070/275000c