大久保で韓国系の店が減少
東京・大久保:韓流から多国籍の街へ ネパール人ら活気
2017年07月27日 11時57分 毎日新聞

 韓国料理店や韓流スターのグッズ店が建ち並ぶ東京・大久保で韓国系の店が減少し、入れ替わるようにネパール料理店などアジア系の店が増えている。「治安がよく、ビザも取りやすい」と日本が人気のようだ。「韓流の聖地」とも呼ばれるコリアンタウンは多国籍の街へと変容しつつある。

 「懐かしい。元気がわいてくる」。JR新大久保駅(東京都新宿区)から徒歩約5分。雑居ビル4階のネパール料理店「アーガン」で、ネパール人の会社員と家族が故郷の料理を楽しんでいた。経営者のセルチャン・ウペンドラさん(26)が昨年6月、韓国料理店の跡に開いた店だ。同じビルの2階にはベトナム料理店が入る。

 ウペンドラさんの期待通り、店は在日ネパール人でにぎわうが、最近は客の半分が日本人という日も。ネットで店の評判を知ったという東京都練馬区の会社員女性(26)は「スパイシーなカレーと干し飯で現地の雰囲気が味わえた。蒸留酒も泡盛みたいでおいしい」と満足そうだった。

 国内唯一というネパール語新聞「ネパリ・サマチャー」も編集室を大久保に構える。ティラク・マッラ編集長(53)によると、新大久保駅と大久保駅近辺には現在、ネパール料理店は25軒ほどあるが、約10軒は2016年以降の出店だ。

 大久保は繁華街の歌舞伎町に近いことに加え、日本語学校が点在していることもあり、1980年代からアジアの留学生らが多く集まった。2000年代に入ると、サッカー・ワールドカップ日韓大会や韓流ブームを追い風に、新大久保駅の東側に韓国系の店が急増した。その後はブームが落ち着き、13年のピークに630を数えた店は、今春には380ほどになったという。

 新宿区によると、区内に住む外国籍の人(4月1日現在)は中国の約1万3000人が最多で、韓国・朝鮮約1万人▽ベトナム約3600人▽ネパール約3500人▽ミャンマー約1900人−−と続く。昨年4月からの増加率はネパールの16%が最高だが、韓国・朝鮮はこの4年で約1700人減った。

 なぜネパール人が増えているのか。06年まで内戦が続き、15年には大地震が起きた。政情不安も影響し、ネパールの若者の間には国外志向が強いという。マッラ編集長は「治安がよく、比較的ビザが取りやすい日本は特に人気」と話す。

 ネパールなどアジアの若者は留学生として来日し、大久保に点在する日本語学校で学ぶ人が多い。学生を当て込んだ店が増え、料理人やその家族らも次々に来日しているという。

 国外送金の会社も目立つ。ネパール系送金会社の店長、シッダールタ・サッキャさん(34)によれば、13年は4店舗だったが、12店舗に増え、ネパール、フィリピン、ベトナムの3カ国の利用者が多いという。

 「オオクボ 都市の力」の著者で法政大兼任講師の稲葉佳子さんは「韓流ブームが落ち着き、多国籍の街になりつつある。日本人も含めてまちづくりを議論して、多文化共生の成功例となってほしい」と期待する。【内橋寿明】

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