長野県佐久市平賀のJR小海線中込―太田部駅間の「第2新町踏切」で昨年11月10日夕、近くの女性(当時81歳)が、線路点検用の列車(検測車)にはねられて死亡した事故について、国の運輸安全委員会が27日、調査報告書を公表した。

 現場は、警報機のみ設置され、遮断機がない「第3種踏切」で、耳が不自由で警報機の音の聞こえない女性は、点滅する赤色灯を見て列車の接近を知る必要があった。だが、踏切の構造などから女性は点滅を確認できず、報告書は「女性が警報機の作動に気づかずに進入した可能性がある」と指摘している。

 報告書によると、検測車の運転士は踏切の約100メートル手前で踏切内にいた女性を発見し、非常ブレーキをかけて警笛を鳴らしたが、間に合わずにはねた。運輸安全委の調べに、運転士は「女性は検測車の接近に気づいていない様子で立ち止まっていた」と証言した。

 運輸安全委は「女性の両耳の聴力低下が事故に関与した可能性がある」とする。女性は20年ほど前から聴力が低下し、身体障害者の認定を受けていた。踏切では警報機の赤色灯の点滅に頼るところが大きかったが、事故当時、点滅が見えにくい状況が重なっていた。

 現場の踏切は、住宅街を抜ける細い道にあるが、約20メートル手前にある民家の庭木の枝で赤色灯が見えにくかった。さらに踏切直前の停止線まで近づくと、線路手前側の警報機は踏切を渡る人の背後の位置になって赤色灯が見えにくく、反対側の警報機も背面しか見えないため、点滅しているかどうかわからない。

 また、赤色灯は警報機の高さ2・5メートルのところに取り付けられていたが、女性は身長約1メートル50で、当時つばの広い麦わら帽子をかぶっていたために視界が狭くなり、赤色灯を確認できなかったとみられる。

 運輸安全委は、再発防止策として「赤色灯を停止線から確認可能となる位置に増設することや、全方位から見えるものを設置すること、さらに遮断機の設置についても検討が望まれる」とした。

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現場写真
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