夢の「歩ける椅子」実現 千葉大准教授ら共同開発 年内にも発売
2017.7.29 07:06

 「歩ける椅子」。そんな不可能にも思えることを実現した製品「archelis(アルケリス)」が
国内外から注目を集めている。千葉大フロンティア医工学センター(千葉市)が金属加工メーカーの
ニットー(横浜市)などとの共同開発により製品化を進めており、年内にも発売を始める予定という。
足腰の弱い人や慢性的な腰痛に悩まされる人にとって、夢の商品になるかもしれない。(長谷裕太)

 ◆腰痛を軽減

 アルケリスは足に装着して使用する「ウェアラブルチェア」。膝の角度を固定する仕組みにより、
立った姿勢のまま椅子に腰を掛けたような状態を維持する。これにより腰痛の軽減が期待できる。
筋肉の動きを補助する「パワードスーツ」などと比べ、電気などの動力も必要なく、運用性の良さを実現。
メンテナンスや価格面でも優位性があるとしている。

 開発者の1人で同大の川平洋准教授(50)は、「自身の悩みが開発のきっかけになった」と
明かす。川平さんは同大で教(きょう)鞭(べん)をとる一方、内視鏡外科の専門医として
月15例ほど手術を手がける。1回の手術は3時間以上の立ち作業になることが多く、
自身や多くの医師が腰痛に悩まされている現状があった。

 「立った姿勢で腰掛けることはできないか」。川平さんは同僚の中村亮一准教授(41)とともに、
付き合いのあった企業の紹介でニットーの藤沢秀行社長(44)に相談、本格的な共同開発が
スタートした。試行錯誤を繰り返して11台の試作品を製作し、市販も視野に入ってきた。
川平さんは「最初は思いつきだったが、ビジョンは見えていたし、話し合いの中でどんどん
アイデアが膨らんだ。人と人のつながりがアルケリスを生んだ」と振り返る。

 ◆立ち仕事にも

 腰痛に悩む医師のため開発を始めたアルケリスだが、立ち仕事が多い農業や工場、美容院などの
現場でも活用が見込める。ただ、そのためには「用途などに合わせた細かい調整が必要」と
藤沢社長は指摘。今後の課題や改善点を検討している。

 アルケリスはホームページ上や展示会などで発表されると、国内外で大きな話題となり、
米国やロシア、中国、ブラジルなどからの問い合わせも多いという。ニットーが動画投稿サイト
「ユーチューブ」に公開した公式動画の再生回数は22万回を超えた。

 アルケリスの特徴について中村さんは「既存の技術を利用し、最低限の機能を盛り込んだ
シンプルな製品。だからこそ多くの人に使ってもらえると思う」と話す。川平さんも「ローテクな
技術でも工夫して使うことで、まだまだ世界で戦えるものを作れる」と誇らしげに語った。

http://www.sankei.com/region/news/170729/rgn1707290067-n1.html