兵庫県姫路市で5月、次男(1)に暴行し大けがを負わせたとして、夫婦が起訴された事件で、市は今年初めに夫婦による虐待リスクを把握しながら、
一度も面会せずに「(一時保護の)緊急性は低い」と判断していたことが2日、分かった。国が示す評価手順に基づいて判断したとするが、
夫婦や次男に面会しなければ確認できない項目を放置したまま、緊急度を過小評価しており、専門家らは市の対応を問題視している。

 姫路市などによると、夫婦は今年1月、兵庫県市川町から同市に転居。次男は乳幼児健診を受けておらず、市は同町から「育児放棄の恐れがある」との連絡を受けた。
その際、長男(7)に対する虐待歴があることも把握したという。

 市は2月、健診を促すために夫婦の自宅を5回訪問したが、不在だった。いずれも昼間だった。
一度も会えないまま3月下旬、虐待事案の同市担当者は、虐待リスクの緊急度を判断する「アセスメントシート」を使い、対応を検討した。

 シートは、厚生労働省が自治体に示した「子ども虐待対応の手引き」を基に作成され、子どもや親の状態に関する設問をチェックして判断する。
ただ、市は次男の状況や夫婦の精神状態を把握していないため、多くの項目を「該当せず」と処理。
緊急度を「比較的低い」と判断し、次男の一時保護をしなかった。

 市こども支援課の金山裕康課長は「市川町からの引き継ぎでは次男の身体的虐待が確認されておらず、
総合的に評価した。対応に積極性が欠けたとは考えていない」と説明する。

 一方、緊急度が高いとの市町判断に基づき、児童を一時保護する兵庫県姫路こども家庭センター(児童相談所)は「姫路市は積極的な自宅訪問などをせず、必要な作業を怠っていた。
危機感が欠けている」と批判。他市の担当者からも疑問の声が上がる。神戸市の担当者は「確認できない項目は放置せず、電話や夜間訪問などあらゆる方法で接触を試みる」とし、明石市は「判断材料が集まらない場合は、むしろ虐待リスクが高いと考える」とする。

 厚労省は「手引きによる判断は、十分な情報収集が大前提。情報が少なければ正しい判断はできない」としている。
(伊田雄馬)

<<「健診受診せず」危険な兆候>>

 関西学院大の高井由起子准教授(社会福祉学)の話 確認できる情報が少ないからといって虐待リスクを低く判断した姫路市の対応は問題がある。
接触が難しい家庭には逆に危機感を高めるべきだ。次男の乳幼児健診を受けない夫婦の態度は、長男の虐待歴も考慮すれば危険な兆候で、一時保護を早期に検討する必要があった。

【姫路1歳児虐待事件】
姫路市で5月、次男(1)を床に投げつけるなどしたとして、同市宮上町1の建設作業員小國亮被告(30)夫婦が逮捕された。
小國被告は傷害罪で公判中。暴行罪で起訴された妻は7月、神戸地裁姫路支部で懲役1年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。
次男は急性硬膜下血腫の大けがを負い、現在も意識不明の重体。


ソース
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010429124.shtml