栃木県佐野市の栃木県職員中里司さん(66)が、山林などで人の血を吸う「ヤマビル」を退治する凝固剤を開発した。

豆腐づくりに使う「にがり」を利用し、靴や衣服に吹き付け、はい上がってきたヤマビルを固め、被害を防ぐ。商品化され、販売も始まっており、中里さんは「林業従事者やハイキング客などに役立ててほしい」という。

 凝固剤は、衣服や帽子、靴などにスプレーで吹き付けて使う。ヤマビルが生息する山林などに入る前に吹き付けておくと、ヤマビルが付いてもすぐに固まり、剥がれ落ちるという。

 中里さんは6年前に佐野市役所を定年退職し、大豆製品の研究を続けており、これが凝固剤の開発につながった。

 昨年7月、千葉市で開かれた食品の見本市に短時間で煮込むことができる大豆の乾燥方法などを出展したところ、隣のブースにいた千葉県内の製塩業者に「塩を作るとにがりが出る。豆腐以外に何かに活用できないか」と相談された。

 その年の春から県南環境森林事務所で、林業従事者を支援する仕事に就いていた中里さんは、業者や同僚から「森に入るとヤマビルにかまれて困っている」という話を聞いていて、「ヤマビルの体も大豆と同じたんぱく質。豆乳がにがりで固まって豆腐になるように、ヤマビルも固まるかもしれない」とひらめいた。

 自宅の畑にいたヒルに似た生物「コウガイビル」に、にがりをかけたところ、もだえ始め、動かなくなった。「ヤマビルにも効くはず」と確信し、ヤマビルの活動が活発になる今年5月、約150匹を捕まえて実験を開始。グリセリンを配合してヤマビルが早く固まるようにするなど試行錯誤して凝固剤を完成させ、先月3日に特許を出願した。

 長男の延弘さん(42)が経営する農産物加工業「佐野大黒屋」が、500ミリ・リットルのスプレー「ツカサダウンヒル」(税別3600円)として商品化。先月26日から販売を始めており、携帯用に便利な100ミリ・リットルのスプレーも開発中という。

 中里さんは「林業従事者だけでなく、レジャーを楽しむ人が安心して森に入れるようになれば」と話している。商品の問い合わせは佐野大黒屋

http://yomiuri.co.jp/economy/20170806-OYT1T50125.html
http://yomiuri.co.jp/photo/20170806/20170806-OYT1I50052-1.jpg